第28話 ファッションショー

俺とウルトゥムは別の部屋に分けられた。


仮にも、どころか正真正銘の皇宮である。


内裏府とは皇帝が住む場所のことで、皇帝のプライベートな場所である禁裏、 皇帝の職場ともいうべき内裏、この二つに参内府という出張所のような場所で成り立つ。


いわば、帝国で最も権力と金が集まっている場所である。


で、あるからして、客人には部屋を一つ用意すればいい。なんてケチなことは言わないものだ。


俺達には寝泊まりするための部屋とは別の、明日行われるという俺への氏名の授与の儀式に着る衣装の試着室が別々に用意されているということだ。


何とも贅沢なものだ。


俺とウルトゥムは部屋を出てすぐに廊下を反対に連れていかれた。


そりゃぁ男と女だから別々になるのは分かるのだが。


チラッ。


つい後ろを振り返ってウルトゥムを視線で追いかけてしまう。


するとちょうど同じタイミングでウルトゥムも振り返って目が合った。


グッ!


途端に俺はジト目になった。


いや、何キメ顔で親指立ててんですか、むしろ俺はアンタが着ているモノ触手のことが心配なんですけど。


その心配など関係なく俺たちは引き離された。


俺が連れて来られたのはドラマなんかで見る楽屋のような部屋だった。


そこで俺は皇帝陛下の前に出るのに恥ずかしくない恰好をさせられた。


「てっきり平安貴族みたいな烏帽子姿だと思っていた。」


「陛下がまだウルタール王国におられた際にあちらの文化をいたく気に入られまして、せっかくなので大和にも取り入れていくために、この機会にお披露目しようとのことです。」


「つまり俺は文字通りの見世物になるんですね。」


俺に衣装を合わせながら女官の一人が話し相手になってくれた。


一応は今日のところは仮合わせらしいけど、本番って明日だよね。皆さん今からお仕事ですか。がんばってください。


「さて、ただいまお料理のご用意をいたしております。それまでこちらのショーをお楽しみください。」


女官のそのセリフと共に俺は採寸していた部屋の端に座らされた。


目の前には精緻な筆さばきで描かれた絵の襖がある。


俺が席に着くと襖が左右に音もなく開いて、


「にゃー。」


猫耳とモフモフ毛皮のドレス(尻尾のオプション付き)に身を着飾ったウルトゥムが現れた。


ちなみに衣装の色は黒である。


膝立ちになって絶妙な角度で足が開かれている。


モフモフの毛皮ニーソと裾の極端に短いショートパンツ、その二つの間に見える太ももの白い肌は眩しいほどに絶対領域。


モチモチのぷりぷり感がすごい。


細くしなやかなくびれを見いせるお腹は―――ス・ハ・ダ。


小っちゃくつつましいおへそさんがこんにちは。


触ったらモフモフしそうな柔らかくて大きな二つのふくらみは、これまたモフモフした毛皮のチューブブラが包んでいる。


毛皮とお胸のダブルモフモフじゃい。


ギュッと詰まった中身が今にもこぼれそうで、こぼさないように今にも手が伸びそうだ。


方は素肌をむき出しで白くつるんとしている。


片方の手は顎の近くに、もう片方は頭の上に手を上げている。ので、キュートな腋がのぞける。


何かエロイ。


とてもいけないものを見てしまったような背徳感がある。


そしてわきの少し下から毛皮でできた手袋?アームカバーってやつかな。


それが二の腕から腕全体を覆っている。


個人的には猫だからと肉球手袋はあざとい感じがして好きじゃない。


だからそれがないこの衣装は個人的にグッジョブと言いたい。


特に、アームカバーの袖が手の甲まで包む萌え袖仕様なのはありがたい。


にゃんこのポーズの手の形が萌えポイント、お招きされたい。


お耳も忘れちゃいけません。


どうゆう仕組みか分からないけど、時々ピコピコと動くのが可愛らしい。


「……しかしなんでコスプレ。」


「これはウルタール王国の伝統衣装で今陛下の中でブームになっているものです。どうですか?」


「どうですかって聞かれましても、これは―――


「とか言いながら、目をキラキラさせながらことをペラペラしゃべっていましたけどね。」


「…………口に出てましたか。」


しかもキモチ悪いって――――

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