第27話 貴賓館にて
内裏府の貴賓館は木造の社殿造り、分かりやすく言うと大きな神社のようになっている。
これは内裏全体がそうなっている。
帝都の町並みは昭和初期のソレであるのだが、内裏はその街並みをぶち破るかのように平安文化の様相で広がっている。
軍令本部があるのは帝都北部で、内裏は中央に南向きで存在する。
大体で軍令本部が平城宮跡のあたりにあり、内裏はその南に広々と存在する。
その大きさは内裏内に薬師寺がすっぽりと収まっているほどである。
そして内裏の正門は南側にあるので、その敷地をぐるっと回って運ばれたわけだ。
おかげで内裏に入った時には日が沈んでいた。
貴賓館は内裏の南東にあり、電気が通ているそうだが外観はたいまつの明かりで照らされていて、幻想的な趣を出している。
紅と白で調和がとれた建物だったが部屋の中は意外にも畳敷きだった。
まるで高級旅館の一室みたいになっているのだが、聞いてみると洋室もあるとのことで変えましょうかと聞かれた。
俺的には和室のほうが好きなのでこのままにしてもらった。
最初は意外に思ったが、なるほど、来賓をもてなすなら格調だけでなくくつろげる様に気を使うものだろう。
気分的には温泉に入って、浴衣で一服したいところ―――だが。
「―――失礼します。」
そうは問屋が許さない。
まぁ、この場合は問屋でなく御上が許してくれないのだが。
「わたくしは紅玉帝陛下より御客人のお世話を仰せつかった
部屋に通され俺は座椅子に座ってくつろぎ、ウルトゥムは珍しいのか部屋の中を見て回っていた。
そこに一人の女性がやってきた。
朱居と名乗った豪華な衣装に身を包んだ女性は複数の女性を引き連れて現れた。
「我々は禁裏にて陛下の御傍仕えをしている宮中女官にございます。」
「これは失礼をいたしました。自分はまだ名乗れる名がないもので御座いますが、この度はお世話になります。」
俺が朱居の自己紹介に正座で返礼したら、ウルトゥムが俺の真似をして正座をしようとするのだが、これがよく分からないようだ。
「ふふふっ、その様にかしこまれなくて結構ですよ。ですが――明日の正午に行われる授与の儀式は大和全土にとどまらずカダス連邦でも放送される予定ですので、―――お2人共しっかり着飾ってもらいます。」
「――え?」
「当たり前ですよ、コレでも国儀ですよ。お2人には恥ずかしくない恰好で出てもらいます。」
「―――あの、そのそれだとワタシも着飾って出なければならないようですが。」
「もちろん出てもらいます。戦後初の祭りとして華は必要です。それが敵対していた帝国の皇族であればなお効果的で御座いましょう。」
俺の後ろで困惑の声を上げたウルトゥムだったが朱居の言葉に納得したように黙る。
しかし、俺はそれに納得いかなかった。
「大和帝国はウルトゥムを見世物にしようというのか。」
「いいえ、見世物は貴方ですよ。ボッキ君。」
黙るしかなかった。
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