第23話 斬って、叩いて、食い散らかして。2

剣で斬りかかってきたローブの男は剣を切り落とし股間に蹴りを叩き込む。


「ぐっ。」


ん?こいつ玉がない。女か。


股間を蹴られても軽く怯むだけのそいつはさらに切りかかってこようとするので、今度はこめかみに刀の柄を叩き込んで意識を刈り取る。


その間に背後から襲って来たヤツは着ていたローブが内側からはじけて巨体を表していた。


オーガ、どうやら人に化けていたようだ。


振るわれた拳をコマのように体を回して振り返りざまに避ける。


と同時にその腕を下から斬り上げる。


そして、懐に踏み込みながら大きな胴体を袈裟懸けに斬り下ろす。


巨体で生命力の高いオーガならこれで死ぬことはないだろう。―――多分。


そこで太陽の光が遮られた。


オーガの背中を駆け上がって小柄な敵が頭上から襲い掛かってきたんだ。


死角からの奇襲としていいところだったが、太陽の位置を確認しなかったことで気づけた。


気づいた以上は攻撃を回避するのはそんなに苦労しない直線的なモノ。


躱しざまに顔面に拳を叩き込む。


カウンターが決まって小柄な体はポーンと綺麗に飛んでいく。


これで最初に斬った奴を含めて4人目。


「あれ?――1人足りない?」


「飛鳥のほうも1人足りなーい。」


殺人嗜好があるシリアルキラーでサイコパスな飛鳥だが、そこは現役の軍人、むしろ実力だけならエースになれるだけの腕を持っているのであっさりと8人―――いや、7人をか、7人を倒してしまっていた。


足りない2人は何処だ?逃げたのかな、っと顔を見合わせていたら。


「2人ならこちらに来ましたのでワタシが始末しておきました。」


「あぁ、それは済まないウル―――――――――


…………


……………………


「……あの、ウルトゥムさん、つかぬことをお伺いしますが。」


「はい、何ですかご主人様。」


「………ウルトゥムさんは……その…ハンバーグを作ったことは……ありますか?」


「すみません。恥ずかしながらワタシは今まで料理をしたことはないので。」


「……そうか、なら今度教えるよ。爆発しないように綺麗に作る方法があるんだ。」


「ありがとうございます。ですが何故それを今?」


「…………うん、……なんでだろうね。」


それはウルトゥムの周りが料理下手が悪戦苦闘したみたいになっているからですよ。


実際は悪戦苦闘どころか楽勝でオーバーキルだったのだろうが。


ここが人通りの無い場所でよかった。


「ねぇ、ボッチ君はこの人と戦って勝ったんだよね。」


「……うん。」


「どうやって?」


「……………………運?」


――――――――――――――――


結局のところウルトゥムが持って行っちゃたみたいになったが、一応は残党の襲撃は撃退できた。


生け捕りに出来たのは3人(最初に斬っちゃた奴は死んでしまった。)、こいつらは他に帝都に侵入した奴がいないかを尋問されることになる。


しかし、ボリア帝国に置いてきぼりにされた敗残兵がいちいち帝都に侵入して襲撃してくるか?


大将の敵討ちに来た忠臣だったかもしれないが、ウルトゥムの容赦のなさと言うか興味の無さからから可能性は低そうだ。


食うに困って?


それなら俺を狙うのはおかしい、軍人は避けるはずだ。


なら何故だ?


戦争を続けたい奴が暗躍してる?


だとしたら嫌だなー。


嫌だから考えるのはやめだ、後のことは他人に任せよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る