第24話 特甲技研にて

無事に(?)特甲技研のラボに到着した俺たちはそこの責任者に出迎えられた。


「おかえり~。」


「……ただいま。」


「あぁ、あんさんに言ったんじゃないぞ。この機体に言ったんだ。」


そんなことは言われなくても解っている。


それでも言わなかったら文句を言うだろう。


本来のウルトゥムと同じくらいの小柄な体型にもかかわらず、作業用のツナギを上半身の部分を腰でしばり、上半身にはスポブラ一丁、頭の上には工業用のごっついゴーグルというガテン系の女。


腰には工具入れが吊るされ、重そうな工具の柄がいくつも見えている。


白くすべすべな肌に細くてもしっかり筋肉のついた四肢、黄土色の固めの髪を短く切りそろえられた容姿は、スポブラに覆われた胸に確かなふくらみが見れなければ男と誤解するだろう。


やなぎ ツィマット、彼女が特甲技研の所長であり、甲種兵装の開発者の1人である。


彼女は大和帝国にいるたった一人の、異星人とのハーフである。


彼女の父親はカダス連邦の鉱精種ドワーフだったのだが、まだ日本だった頃、地球が転移してから5年がたったころに地球に移住を求めてやってきたそうだ。


職人であった彼は日本の機械技術に心を奪われ日本への帰化を望んだのだ。


それから25年、彼は日本人の妻をめとり子供もできている、その娘は20歳という若さにもかかわらず特甲技研の所長をしているのだ。


ちなみに俺は17才、これで大尉とかかなりのエリートだ。


それに対してツィマット所長は技術中佐、父親は技術中将だ。


このことからも大和帝国が2人を重宝したのは分かるだろう。


そんなツィマット所長はすごくモテるにもかかわらず、俺の乗っていた甲型機動甲冑の装甲に猫を可愛がるかのように頬ずりしている。


「ふわぁぁぁ~♡、あっ、そうだボッキ大尉。」


「貴方も俺をボッキと呼びますか。せめてボッチでお願いします。」


「いや、軍の公式書類にも書かれてるし。」


「ガッデム!」


俺は頭を抱えて天を仰いだ。


「ご主人様、落ち着いてください。ご主人様はこの後正式な名前をもらえるではないですか。」


「そー言えば、そんな話があったなぁ。」


「その話広まってるんですか。」


「あぁ、今後の国政に関わる者たちを集めてパーティーをするらしくてな、その話がウチのとこにも来ておったんやけど、そこに氏名未定ってのがあったから聞いてみたらあんさんやった訳や。」


「―――俺もそのパーティに出るんですかなぁ。」


「まぁ間違いなくな。」


正直行きたくない。そう言う場所では会いたくないものに出会いそうだからだ。


「だから多分1週間は待たなあかんで。」


「うぐ、まぁこっちでないとできないことが結構あるからこの機会にやっておくか。」


「んでだ、このあとは内裏府のほうに行く予定やったやろうけど、先に軍令本部のほうに顔出してほしいそうやで。」


「え?なんで。」


「しらんよ、ウチもさっき伝言を頼まれただけやからな。」


「それって誰からですか。」


「あぁ、それなら――――


「マジっすか。」


その言伝を頼んだ人の名前は無視できない人の名前だった。


そろそろ日も暮れるけど、まだゆっくりはできないようだ。

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