第7話 うちの執事

「でさぁ、旦那の過去の話もいいけどそろそろ今の話もしない?」


ウィズの提案でそれもそうかと俺はウルトゥムと目配せをする。


「そうだな、とりあえずまずは――」


「そこに立ってるおっさんが誰かってことだよね☆。」


そうなのである。


俺とウルトゥム、そしてウィズの3人でこの広間で話していたが、その間ずっと少し離れた場所にたたずんでるおっさん―――いや、おじいさんがいたのである。


最初っから。


直立不動で。


今まで無視してきたがそろそろ限界だろう。


俺は3人を代表して声をかけることにした。


「すんませんが貴方は何者ですか。」


そう俺が訪ねると、今まで直立不動だった黒い執事服のような物を纏っていたじいさんが恭しく頭を下げて名乗りを上げた。


せつはヴォルテールと申します。僭越ながらご主人様にお仕えすることとなりました。つきましては平時より執事としてお使いください。」


「?」


「?」


「ハァ、ヴォルテール!」


俺とウィズは正直「誰これ?」って首をひねっていたが、メイドのウルトゥムが、今まで鉄面皮のごとく表情を変えなかったのにあんぐりと口を開けて驚いていた。


どうやらウルトゥムの知り合いらしい。


「知り合い?」


って、聞けば目をそらされてしまったのだが、一応紹介してくれた。


どうやら先の戦いの折に空から落ちてきたあの竜であるらしい。


いやいや、なんであの時のドラゴンがうちの執事になってんの。


「あぁ、一応ボリア帝国の象徴になっている7匹の帝竜の一匹です。」


すっごいのがきた~。


てか、ウルトゥムさん。もう少しこの人にやさしくしてあげない。


なんでそんなに今にもつばを吐きそうな顔でガン飛ばしてるんですか。


すっげー気になるけどなんかツッコミづらいのでここは流しておこう。


「で、そのボリア帝国の象徴がなんでここにいるの。」


「ははは、それは先の戦いで無様にも敗北を晒して捕虜になったからですな。」


「あぁ~、あのさ、おたくを倒したのは隊長だったよな。」


「はい、一騎打ちで負けるなどここ1000年は無かったこと、いやはや人間も侮れませんなぁ。」


いや、隊長アレを人間と呼んでいいのだろうか。


「あのさ、俺は『捕虜は拾って来たヤツが面倒を見ろ。』って言われたんだが。」


「ですか。まぁボリア帝国とご主人様の所属する大和帝国の間には捕虜協定など御座いませんからな。」


「ついでに言いますと、この惑星に侵攻した部隊はボリアの皇帝にとってさほど重要ではなかったでしょうから、まぁワタシたちは見捨てられたという事でしょう。」


と、ウルトゥム。


「まぁ、その事情は分かるけどそれならおたくは隊長が主人になるんじゃないのか。」


「あの方は身内がいないのにいきなり領地持ちになってしまった部下のためにと拙を使うことにしたのです。」


「ご主人様。こんなこと言ってますがこの駄竜なんか信用できません。」


「いやいや、ウルトゥムさんや、あなたも同じ立場でしょ。」


「ご主人様。ワタシはこの駄竜と違って直接ご主人様と戦って身も心も奪われたのですよ。一緒にしないでください。」


「いや、俺が勝てたのはその竜が負けたことに動揺したすきを突いたからだけど。」


「えぇ、ワタシが負けたのはこの駄竜のせいですね。だから信用してはいけません。」


「ははは、ご安心を。しっかり働かないと食肉にすると言われてますから命がけでお仕えさせてもらいます。」


「ハハハ、さよか。まぁそう言うならがんばってもらうよ。正直人手はほしかったからな。」


「存分にお使いください。しかしあれですな。」


「ん?」


「執事でドラゴン。さしずめスチュワードラゴンと言ったところですかな。」


は?


何言ってんのコイツ。


執事ならバトラーだろ。


え、執事ってスチュワードとも呼ぶんだ。


へ~。


てかこいつサラリとバトラーより上位ですって勝手に言ってんの。


もしかしてホントに駄竜?

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