第6話 さて、挫折に付いて語ろうか。

「と、まぁこんな感じでコイツとの付き合いは始まったんだ。」


飾りっけはないがそこそこ広い真新しい広間。


俺が領主となった記念にとウィズが用意してくれた屋敷の一室だ。


まぁ、その屋敷も俺が相応の活躍をして満足感を得たからその対価なのだろうが、まぁ実家を追い出されて家の無い俺にとってはありがたいものだ。


そこで俺はこれから俺の従者になる者たちに悪魔との出会いを語った。


…オッパイちゅーちゅーの件は省いたが。


「なるほど、そこな悪魔はご主人様の満足感を食べて生きていると、そして対価にご主人様の願いを叶えるいるわけですね。」


「ちっちっち、ちょーと違うんだよね☆、願いそのものを叶えていたら満足感なんてすぐ薄れてしまいますよ。ダ・カ・ラ、ボクが与えるのは道具や切っ掛けなのです♪。例えば騎士になって名を挙げたいと願うなら、剣や鎧をプレゼントしたり、他の人の思考にちょちょいと介入して手柄を上げやすい仕事に付けるようにすることかな♡。」


「それはいいのですが、さっきも聞きましたが貴様がご主人様の満足感を食べてしまえばご主人様が満足できないのでは?」


「キミは食べたモノをすぐに消化できる?できないよね♪それと同じで契約者の中から満足感をすっぽりと抜き取るんじゃなく、じわじわと体の中の満足感を消化していくって感じなんだ☆。だから旦那が無感動になることはないよ。まぁ、見方によっては強欲に見えるかもしれないけど♡」


「そう言うところは悪魔っぽいですね。」


「悪魔ですから♪」


「まぁこれでウィズのことは分かったと思うが、特別人に害はない、どころか間接的にはいいこともあるぞ。例えばこの屋敷もウィズが作ってくれたものだからな。」


「なるほど、それは素晴らしい力です。ですが、ならばこそより良い満足感を得るためにこの悪魔はご主人様を過酷な運命に落とすのではないですか。例えばご実家を勘当されたこととか。」


「ハッハっハー☆、そう思えるのは仕方ないよね♬。確かに僕だってその方が効率的だって思うもん♡」


「おい、ウィズ。まさか…お前—――」


「しかしそんなことをする前に旦那は勝手に勘当されてました。」


「…………」


「…………」


うん、いやまぁそうだよね。


あの頃のウィズはまだひもじいとか言っていたころで賭けに出る余裕なんか無かっただろう。


戦果を上げて領地をもらったことでウィズはお腹いっぱいになる達成感を得られたわけで、この屋敷もそのお礼らしい。


そうかー、勘当されたのは俺の責任かー。


名家の出ってことでそれなりに真面目にやってきたんだが、士官学校で不良が立ち入り禁止区域に侵入したと知って連れ戻しに行ったときに、抵抗されてとっさに手に取った物がダメだったんだよなぁー。


アレが軍事機密だったために処罰を受けることになって、あれよあれよと言う間に実家を勘当されてしまったんだよな。


そんでそんな俺を拾ったのが実験部隊。表向きは懲罰部隊とされる問題児の巣窟。


おかげで東雲家の神童と言われた俺も完全な落ちこぼれ扱いでした。


実家からは完全に縁を斬られ、それまでの友人たちも俺から離れていった。


まるで前世の人生のようだとも思ったものだ。


けれども配属された実験部隊での仲間たちは変わり者だが面白くて、最初は憮然としていた俺も振り回されているうちに彼らに染まってしまった。


あいつらは最高の仲間だ。

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