第5話 新たな人生の始まり。

「グス、ヒグ、シクシクシク、~~~~~~~ぐすん。」


俺が廃病院の崩落で死んでから、新しい命に生まれ変わってある程度成長するまで悪魔そいつは部屋の隅で膝を抱えてべそをかき続けていた。


ようやく俺がまともに喋れるようになった時、ウィズはそれはもう目を真っ赤にして泣きついてきた。


「なんでお前はあそこでずーと泣いていたんだ。」


「それはですね、悪魔の契約にはいくつかルールがあるんですけどね。」


ウィズの奴は散々泣き続けていた為、その口調には元気がない―――というか♡とか☆とかが付いていなかった。


「悪魔から持ち掛けた契約は悪魔のほうから先に対価を提供しなければなりません。そして相手がそれに対する対価を支払って契約は満了、継続するなり終わりにするなりにしても最低1回はこれをこなさなければなりません。」


ちなみに悪魔の働きに対価を支払わなければ魂を奪われるらしい。


「旦那との契約なら満足感を得た時点で対価がもらえるので契約不履行にならない、後は自分の実力次第だ。と思っていたのに、いきなり旦那が死んでしまうからボク何もできなかったんですよ~。」


「それなら他の契約者を探せばよかっただろ。」


「残念ながら契約満了もなく、魂を対価に奪うでもなく、どころか契約を持ち掛けた方が何もしないままだと新しい契約を結ぶこともできないんですよ~。」


つまり、不幸な事故で食べ物を失った上に新しい食べ物を探しに行くこともできないと、……それは何とも哀れな。


「何とか旦那の生まれ変わりに付いてこれましたがこうして話ができるまでずっとひもじくてひもじくて、涙が止まりませんでした。」


「いや、生まれてからずっと枕もとで泣いてる悪魔がいるこっちの身にもなってくれよ。」


そう悪魔に不満を漏らすとクリっとしたその眼をむいて金色の瞳を若干開いた状態でオレの目を覗き込んできながら反論してきた。


「いいですよねぇ~、旦那はたぁ~ぷりママのオッパイを味わっていたんですから。」


かなり恨めしそうに上から目線(物理)で睨んでくるウィズ。


「オッパイ、オッパイ。あぁ~羨ましいぃ。ボクがお腹を空かせている目の前で旦那はお腹いっぱいオッパイを堪能してましたよねぇ。オッパイをちゅーちゅー、ちゅーちゅーしてマ・ン・ゾ・クですかぁ。」


ただの授乳なのに自分のその姿を他人から改めて言われると恥ずかしいものである。


「あぁ~、これがボクが与えた満足ならボクのお腹もふくれ―――あっ、そうか、ボクのオッパイをあげればボクが満足させられるんじゃないか♪」


「いやいやいや、おまえそんなペッタンコな胸でおっぱい出るの?てかお前女だったの。」


「フフフッ、悪魔のボクに性別は関係ないのだよ♪。そして悪魔は契約者の願いを叶えるために魔力でいろいろできるのだ☆。ならばボクだってオッパイくらいは出る―――はず。」


「はずって、たよりないなぁ。てかそれならその胸もボインボインにできるのか。」


「あははは、おなかペコペコのボクにそんなことをしろって、無茶を言うなぁ☆。うん、別に胸を大きくできないわけでは無いけど魔力の無駄になるからね。ハハハ、コスパ的には貧乳こそ最強なのだよ(;^ω^)、うん、あえてだよあえて。」


どうやらこの悪魔は巨乳にはなれないようだ。


しかも語尾の♡や☆が顔文字になっているのに気が付いていないようだ。


「そんなことより、ホラ、オッパイチューチューしましょうねぇ~♡」


赤ん坊扱いしてくる悪魔にイラッとしたがよく考えたら今の俺は赤ん坊だった。


ウィズはそのペッタンコの胸をさらけ出して俺の口に持ってくる。


オイオイ、マジでやるのか。てかウィズの奴悪魔のくせに綺麗な乳首してるんだな。それよりこれで満足感を得たら俺って変態じゃないか?


「ハ~イ♡ちゅーちゅーしましょうねぇ~☆。あぁ~♡来ますキテマス。久々の満足感♪。久しぶりのごはんはとっても美味しいですぅ~♡」


どうやら俺は変態のようだ。

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