第8話 最初の方針。

「それで旦那、そろそろ今後の方針とか決めましょう♭。正直飽きてきましたww。」


ウィズが愚痴り始めたからではないが、確かに今後の方針を決めないといけない。


そうしなければ何も動かない。


それは分かっている。


分かっているのだが……。


「それでご主人様のご希望はありますか。」


そうヴォルテールが聞いてくるので俺はあきらめて領地運営の方針を提示することにした。


「いいか、これが一番大事なことだからな。俺はこの領地をまずは――――人の住める場所にしたい。」


「…………♡」


「……………………。」


「…………ですよねぇ~。」


俺の発言に言葉を失う悪魔とドラゴン、そしてメイドはあきらめた表情で相槌を打っている。


こうなるのは仕方ない。


だってこの領地は何も無い田舎を通り越して未開の地となっているのだ。


俺たちが居る屋敷の外、俺の領地は白亜紀のジャングルかと言いたくなるほど鮮やかな緑あふれる大地なのである。


時々ワイバーンとプテラノドンが縄張り争いしている光景が見られる。


信じられるか、ここは地球の日本なんだぜ。


1度死んで生まれなおした世界は元の地球では無かった。


つまり俺は異世界転生したのだ。


けど、俺が転生したのは地球。


太陽系とは異なる恒星の軌道上に異世界転移した地球に転生したのだ。


……うん、ややこしい―――って言うかぶっ飛びすぎだろ。


しかも転移先の宙域は惑星間戦争の真っ只中。


そんなところにいきなり転移したもんだから地球は異星人たちに侵略されました。


俺が生まれる前、第二次世界大戦がはじまったあたりのことらしい。


結局、地球人は一致団結できずに各個撃破されていき、俺が生まれた時には地球のほとんどが侵略されていた。


今では国家の体をなしているのは俺の国「大和帝国」だけである。


「大和帝国」。旧、大日本帝国。この国は先代の昭和天皇により国家総動員の勅令をもって侵略に抗ったあらがった


無謀な突撃を良しとせず、生き残るための戦略を第一にしました。


そうして時間を稼ぎながらこの世界の理を解き明かしながら、地球の技術と合わせた新たな技術を開発して、ついには侵略者を撃退できるまでに至った。


しかしその時には日本の土地のほとんどを失ており、機内の一部まで追い込まれていた。


そんな日本に救いの手が差し伸べられたのは偶然なのだろうか?


カダス連邦。


ボリア帝国の対極を成す惑星間戦争の一大勢力。


そのカダス連邦こそが日本と戦っていた存在だった。


そのカダス連邦に抗っていた日本は、カダス連邦の首長国であるウルタール王国に認められ、この国の主権を認められた。


たった一国であったが後ろ盾を得た日本。


その日本には力があった。


ウルタール王国の後ろ盾を手に入れた日本はカダス連邦に所属することになり、その後は大きな侵略をうけることはなくなった。


日本が国力を回復する間はカダス連邦の庇護下にあるようなものだったが、日本の技術はカダス連邦にも大いに役立つものだった。


そして、国力がある程度獲得できた日本は「大和帝国」と名を変え、攘夷を掲げたのである。


即ち、「地球は地球人のモノであり、これを不当に支配する者たちを武力でもって排斥する。」と公言したのであった。

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