第3話【道雪】車返の陣(熊本での戦い)P20
浅川聞書の説明も終わった(つもりになれた)し、ここからはフリースタイルで、読みたい話を適当に翻訳していきます。
なお本書は
ボケ役;浅川伝右衛門(じいちゃん)
ツッコミ約;太郎と次郎(子供)
でおおくります。
また道雪は昔、戸次鑑連(べっきあきつら)という名前でした。
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「道雪様が肥後(熊本)で車返しの陣をとった時の話をしよう」
浅川は二人の子供に手元のメモ帳を見返しながら言った。
「車返の陣?」
「道雪公は【難所で敵から3方囲まれて軍を引こうすることがどうしてもできなかった事があった。この時、合志(三池先祖)から3千ばかりの兵が味方にきた】」
「これ、いつの話なんだろう?」
「『肥後守護の菊池義武』っていう大友宗麟の叔父さんが大内義隆に寝返った時の話なら1534年位?」
「あとは1550年にもう一回菊池義武が反乱を起こした時かなぁ?」
「でもこの時、合志氏って大友とは敵対してたから味方にはならないと思うよ?」
「じゃあ道雪様は1513年生まれだから22歳の時の話かなー?」
「……ふたりとも『隙あらば、こちらの記録の矛盾点を探しだしてやるぞ』という視点は如何なものかと思うぞ」
とんだクレーマー2人を前に浅川は冷や汗を流す。
「話を続けよう【このとき海老名肥前(守)というものが道雪様より使わされ、合志へ加勢として出陣され大喜びされた。「屋形様へ共に申し上げよう」といって、まずそこへお座りなされて御見物くだされと返礼をした。
「海老名って播磨で有名な武将らしいけど九州ではあんまりみないよね?」
「【そして馬より下りると(道雪様は)阿蘇山へ向かってこう言った。「皆知ってのように戸次鑑連は14歳の初陣から今までたびたびの合戦でも一度も他家の助けを借りずに合戦で遅れをとらなかった。もし今日の合戦に勝てなければたとえ他家の合力で戦死を免れたとしても生きる甲斐がないだろう。ただ願わくば阿蘇大明神熟覧あれ、速く勝利を得させたまえ。少しでも不義の心あればたちどころに利を失うべし」と拝礼し馬に乗ると、白生彪の鷹(しろいまだらのある鷹?)が一羽飛んできて帳のすみに止まると足を振るわせた】」
「これ、今まで単独で連勝記録更新してたのに、援軍まで来たなら負けるわけがないよな?って味方にプレッシャーかけてるの?」
「援軍の人たちも気まずかっただろうねー」
「【これを見て一同は涙を流し「利疑いなし」と勇んで敵に襲いかかった】」
「「何故泣くのー!」」
「ああ、阿蘇神社は「違い鷹の羽」を神紋として使っていたから、神様が道雪様の言葉に応じて鷹を遣わされたと思ったからじゃろう」
「…それ、注釈で書いてくれないとわからないと思うよー?」
「え?九州に住んどったら阿蘇神社と鷹の関係は常識じゃろ?」
浅川は聞く耳をもたなかった。
「さて、阿蘇神社の加護かは分からぬが、【(道雪様の軍は)その時までは向かい風だったのが急に追い風となり、旗色が直ったので敵は退却し何事もなくなった。
これは小野和泉が「(自分が)お供して共に見届けた事である。不思議なことである」とたびたび話しておった】」
「小野和泉?」
「本名は小野 鎮幸(おの しげゆき1546?~1609年)元々大友家の家臣だったのを道雪様からへっどはんてぃんぐされた男でな、日本槍柱七本・立花四天王の一人にも数えられる男じゃ」
「へー、凄い男だね」
「あれ?だとすると、このお話って変じゃない?」
「変とは?」
「だってー。戸次道雪様が熊本に行ける時期で戦争があったのは1534年と1550年くらいでしょー?」
「そうじゃが?」
「だとしたら1546年に生まれた人が御供できるわけがないじゃない?」
「あれ?」
言われてみればそうである。
アッルゥェー?と首を傾げて考えてみたが、この矛盾を整合できない。
「これは父親の小野和泉の話だったかのう?」と言い出す始末だ。
「人の名前書く時は、役職名じゃなくて真名かかないと、こういう時こまるでしょー」
「えぇ…(困惑)だって真名を書くとか失礼な事出来ないし…」と言い訳しながら浅川は話を続ける。
「ええと…ともかくじゃな【その後、道雪さまの代では(この時より鷹は神の使いとして礼節を示し)ついに鷹を御する事はなかった。(道雪様の養子となった)宗茂様もこれを聞いて鷹を召し置いても御すことはなかった】」(この話終わり)
話し終えて浅川はネタ本を閉じた。
「つまりじゃな、道雪様にとって鷹は有難い神の使いであり、神仏を尊んだので戦いに勝つ事ができたというわけじゃ」
「色々整合性に乏しい部分はあるけど、追い風だと矢が良く飛ぶし進軍も楽だから有利になるのは間違いないねー」
「きっと阿蘇山とは反対の山に雨とか降って、冷えた空気が風になって吹き込んだ気もするけど神様ってありがたいもんだねー」
「ええい!理屈の多い現代っ子どもめ!屁理屈を言うでない!」
浅川は癇癪を起したように小癪な子供に抗議した。
「きゃー」「きゃー」
と言いながら逃げようとする太郎と次郎。
しかし次郎が、急に気がついたように「あれ?」と首をかしげて「ねえ爺ちゃん」と浅川に言った。
「何じゃ?」
「今回のお話、オチは良かったんだけど…」
そういうとまっすぐに見つめて
「今回のタイトルの『車返の陣』の『車返』っていったいなんだったの?」
「あ」
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「熊本県阿蘇郡阿蘇町に車帰の地名がある(太宰府古文化論叢: 九州歴史資料館開館十周年記念, 第 1 巻 1983年)」らしいです。
つまり本来なら『車帰という地名の場所に布陣した時の事』と説明すべきなのでしょうけど、浅川聞書本編には「それくらい言わなくてもわかるだろう」といわんばかりに説明はありませんでした。
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