第2話 もっともふさわしい剣
勇者見習いが武器屋に入ると、そこには二人の男がいた。
「ここでいちばん重くて強くてかっこいい剣をくれ!」
勇者見習いが開口一番そういうと、二人の男は顔を見合わせた。
男の一人は店の主人のアルマだ。もう一人はアルマより若く、彼から剣を受け取ると
「また来る」
とひとこと言って店を出て行った。
アルマが勇者見習いを頭の先からつま先まで眺めてにやりと笑う。
「これまた、威勢のいいあんちゃんだねぇ。剣が欲しいってことは冒険に出るのかい?」
「ああそうだ、冒険には剣がいると思ってな!いいのはあるか?」
そう言って鎧をゆらしてがしゃがしゃと店の中をうろつくと、砂埃が舞う。
「おいおいあんちゃん、なんだその鎧は。どっか冒険に行ってきたのか?」
「いや、住んでた村からまっすぐ来ただけだ」
勇者見習いが鎧を脱ぐと、アルマはそれを受け取って軽く拭く。汚れは簡単に落ちそうだ。
「ずいぶん年季の入った代物だ……綺麗好きの旅籠屋に見せたら大変だぞ」
「ああ、さっきおかみさんに綺麗にして来いって追い出されたんだ」
アルマはそれを聞いて大きな口を開けて笑った。
「そりゃそうだろう!よく旅籠屋を追い出されただけですんだよ。
これは磨いてやるから少し時間をくれ……さて、今まで持ってた剣はどんなものだ?」
「剣は持ったことない。斧とか弓なら使ってたけど」
「持ったことない?ふむ……それじゃあこの剣はどうだ?イツワリの銅を使ってできた剣だ。この店には一本しかない珍しいものだぞ」
アルマが差し出した剣を、勇者見習いが受け取る。両手で持ってかかげると、重さでグラグラと揺れた。アルマがじっと勇者見習いを見る。
「ほぉー、これが剣か」
剣を持つ手がおぼつかない勇者見習いを見て、アルマはさらに
「これくらいの剣も持てないとこの周辺のモンスターはなーんにも倒せねぇんじゃないかなぁ。どうだ、無理そうか?」
と言ってにやりと笑う。勇者見習いは剣を腰に収めると、
「よし、この剣にしよう!」
と言いながら重さでぐらりと傾いた。しかし気にする様子はない。
お金のやり取りを終えると、アルマは勇者見習いの鎧をみがく作業を始める。
「そういえば、さっきいたのは町の警護団の人だろう。あの人はずいぶん長い剣をもっていたなぁ」
勇者見習いが他の剣を眺めながら何の気なしにそういうと、アルマは一瞬手を止め、アルマに視線を向ける。
「……なんで警護団の者だとわかったんだ?」
その鋭い視線に気づかず、勇者見習いは腰に差した剣にバランスを崩して一人で四苦八苦している。
「この町に入るときの検問で見た。やっぱ身長高いとあんなデカい剣振り回せていいよな~」
そう言って屈託なく笑う勇者見習いに、アルマも肩をすくめて笑顔を見せ、鎧みがきを続ける。
「おれは元警護団の団長でな、あいつらの武器もみてやってんのさ」
「へぇ~そうなのか。なぁ、この町の近くで一番強いモンスターか魔王の手下がいるところ知らねぇか?早いところ手柄をあげて名を売りたいんだ」
勇者見習いが尋ねると、アルマが顎に手を当てて答える。
「そうさなぁ。俺はもう引退した身だから……周辺のことは商人の頭が詳しいぜ。あちこち商売しに出かけるからいろいろ情報を持ってるはずだ」
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