第5話 握り締めたこぶし

前回と関連する話題である。日本を出るまえ、おそらくぼくは多くの場面でつねにこぶしを握り締めていた。「おそらく」と書いたのは、妻に指摘されるまで自分でも気づかなかったからである。手の緊張を解くことを自然にできるようになってこの癖をやめることができた現在、手を握ってこぶしを作ってみると、この動作をするためにどれだけ大きな力が必要なのか、自覚的に知ることができる。日本の社会的プレッシャーの堆積がどのような身体的効果をもたらすかを示す、もうひとつの事例である。

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