第4話 自然な笑顔

日本を出るまえ、ぼくはどうやったら笑顔を作ることができるのかを忘れていた。というよりは、写真に写った自分の笑顔がものすごく嫌いで、笑顔を作るのを意図的に避けるようになっていた。写真に写る笑った自分の顔は、引きつっていてほんとうに醜いものだった。日本社会がさまざまな側面から与えてくるプレッシャーが長年積もりに積もって、ぼくは笑顔を作る仕方を忘れてしまっていたのだと思う。現在のぼくは、妻(日本人ではない)のおかげで、完璧ではないものの笑顔を作ることができるようになっている。いや、「作る」という表現は正確ではない。笑顔は、顔の筋肉の緊張を解くことができれば、幸せだと感じることができた場合に自然に「出て」くるものなのだ。多くの日本人はそのことを忘れてしまっている。

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