第3話 「議論」ってなに?

日本ではdiscussionとargumentが区別されずに用いられてる。論文を書かなければならない学問の世界でだってそうだ。でも、このことに、ぼく自身も海外に住みはじめて幾年もたってから気づいた。Discussionとは、たんに、あーでもない、こーでもないと、ものごとをいろいろな角度から検証していくことだけを意味する。これに対して、argumentとは、ぼくが何かを表明したとして、それに対して別のひとが同意するか反対するかの余地があるような場合、そのような種類の表明のことを意味する。ぼくの感覚では、ほとんどの日本人は「議論」を前者の意味でだけ使っているような気がする。だから、日本人(著名な学者を含む)が書いた論文を読むと、argumentがないということが特徴的であると気づく。ところが、海外では、argumentがないと、論文は論文であるとはみなされない。このような理由から、日本でだけ教育を受けた学者の論文は世界では通用しない。

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