第16話芽生える思い
5月 2日
「う、さむ」
ブルっと身震いして起き上がる。
春なのに、まるで冬のような寒さだな。どうなってんだ?地球?
そういう冗談は置いといて、僕はカーテンを開けた。そこには・・・・・・。
「おお」
俺はすぐにまいちゃんにクロスで8時に散歩をしよう、と伝え、身支度を整え始めた。
そして果たせるかな。8時にまいちゃんとボアは現れた。今日は白のワンピースを着ている。
まいちゃんがにっこり笑った。
「おはようタカくん」
「おはよう。悪かったね、こんな早く呼び出して」
まいちゃんは首を横に振るう。
「ううん。いいよ。だって今朝は・・・・・・」
「ああ、白世界だ」
雪が降り積もったわけではないが、あたり一面に靄(もや)が垂れ込み、あたりを白世界に彩っていた。
「ワン!」
「はは、ボア、元気にしてたか?」
ボアの頭を撫でる。ボアはくすぐったそうにしていた。
「さ、散歩、行こうか。こんなに風景が変わっているから、とても素敵な景色を見れれると思うよ」
「うん」
それにまいちゃんもうなずいた。
そして、俺たちは歩いて行く。車道と通学路の境(さかい)に来た時に・・・・・
「おお」
「すごい」
普通なら一直線に伸びる車道が見えるのだけれど、今日は靄の壁が横たわっていた。
「なんかいいね。いつもとは違う景色を見るというのは」
「ああ、全くだ」
そして、俺たちは通学路の方へ足を向けた。
「気をつけて。車が来ると危ないから」
「うん」
俺はまいちゃんをフェンス側に移動し、俺が道路側に移動した。
「ま、でも、靄(もや)でよかったね。霧だと、ここ歩くのほんと危ないから」
「そうだね」
そして、通学路の坂道を登った時の風景は・・・・・・。
「おお!」
「すごいすごい!」
遠方まで靄に囲まれてまさに圧巻。しかも、多少見通しがいいため。遠くまで見えるから、靄が作る白い世界を堪能(たんのう)できる。これぞ絶景。
「すごいね!タカくん!」
興奮気味に話すまいちゃんに俺はうなずいた。
「ああ」
そして独白のように呟いた。
「実はさ」
「うん」
「霧とかって、大変だなと子供の頃思っていた。ほら、あっただろ?塩野に行く道が事故で止まったの。あれ見ていて、つくづく大人って大変だな、と思ったよ」
それにまいちゃんがクスリと笑った。
「タカくん、もう大人」
「お?そうだったな」
そう戯けて(おどけて)言ったら、まいちゃんはクスクス笑いだした。
「でもさ、まいちゃんといるとどうも昔のことを思い出してしまうんだよな」
それにまいちゃんはうなずいた。
「私も」
俺はまいちゃんの横顔をじっと見た。
「まいちゃん・・・・・・・」
「何?」
しばらく俺たちは見つめ合い、俺は目を逸らした。
「いや、なんでもない」
「・・・・・・・・・うん」
まいちゃんの頬もいくらか赤くなっていた。
「さ、散歩の再開をしようぜ」
「ワン!」
ボアが吠えた。
「はは、わかってるって、これから歩くから、心配するな。一気にダッシュするなよな?」
「ワン」
「じゃ、散歩の続きをしよう」
「うん」
それからしばらく散歩をした後に、俺たちは家に帰った。
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