第11話新しい道路

そうやって首を傾げると、まいちゃんの笑い声が大きくなった。

 そのまま、車道を横断してもまだまいちゃんはニコニコだった。

 やれやれ、どうやらツボみたいだったな。

そのまま、放置しようとおもったその時。気づいた、遥か遠くの車が猛スピードでこっちに来るのを。俺は迷わずまいちゃんの手を握った。


「行こう!車がくる!」

「うん」


 ちょうど渡り切った時に、車が通り過ぎた。通りすぎた車は思いっきりブザーを鳴らした。

「まいちゃん、大丈夫?」


俺はまいちゃんの目を覗き(のぞき)込む。まいちゃんはうなずいた。

「大丈夫。にしてもあの車何?失礼にも程があるんだけど?」


「そうだな。それよりも」

「?」


「ここ、通学路だよな?小学生の」


「あ」

 まいちゃんは手を唇に当てた。


「俺ずっと宗堂に住んでいたけど、こんなことを知らなかった。なのに、勝手に道路が出来上がっていた。これはなんだ?子供たちといえば近隣住民にとっても関心を寄せねばならないことだろう?でも、住民の説明もないままこんなことが起きているってなんなんだ?」


「そうだね。おかしいよね、こんなの」

「そうだ、おかしい」


 それから、僕たちは僕の自宅前に帰ってきた。すぐ隣がまいちゃんの家だ。


「今日はありがとう。楽しかったよ」

「いえいえ、こちらこそ」

 丁寧に頭を下げるまいちゃん。


「じゃあ、また機会があれば一緒に散歩しよう。

「うん」

 まいちゃんは満面の笑みで答えて、俺たちは別れた。




 その日に昼。

「え?道路?」

 俺はおかんに今朝起きたことを話し、何か業者から説明はあったかと問いかけた。


「別に何も。でも聞くところによると保護者のみんなには説明をしたらしいけど」


「でも、子供たちは住民の共通の財産だろ?それに今の小学生が卒業しても、道路は残るわけだから、今の保護者に説明して終わり、と言うのはあまりに無責任じゃないのか?」


「それはそうだけど・・・・・・・」

 おかんは唇を窄める(すぼめる)。

「でも、出来上がったものはしょうがない。あそこの土地は私たちの土地じゃないから」


「でも、あそこは小学生の通る通学路で、安全を考えると住民全員の同意が必要だ」


「まあ、貴俊の言いたいこともわかるけど、実際問題としてお上が決めたものだし、保護者たちが納得したんだから私たちにはどうすることもできないのよ」 


 俺は天を仰いだ。

「なんか納得いかない。自分の故郷が勝手に変わられているのって納得いかない」


「でも、上の人がお決めになったことだから」

 それを聞いて渋々引き下がった。

 その後、小説を読んでいても今朝のことが頭から離れられなかった。

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