第2話運動不足と謎の美女
4月 25日 土曜日
「うう〜、眠〜」
ちなみにこれは起きたばかりの話じゃない。起きて3時間ぐらい経った時のことだ。
8時に起きて、11時までソシャゲをやっていた。デイリーイベントのコンプをしながらブラブラとやっていたのだ。
「このままじゃあいかんな」
まだ、昼夜逆転ではないが、体が鈍っているのはすごく感じる。しかし、今日は最高26度まで上がるらしいし。
「夕方散歩するか」
うん。それがいい。そうしよう。
そうしたら同室の兄貴がひょっこり声をかけてきた。
「運動をするのか?」
「ああ、すっかり運動不足だよ」
「俺もダンスをするか」
そう言って兄貴はスマホを取り出して、ワイヤレスヘッドホンをかけた。
俺たちの部屋は10畳の間取りで結構大きい。昔は本棚とかが結構あったが、兄貴と相談して、部屋の中央の本棚を撤去。端にベットとテーブルと最低限の本棚を残すだけで結構さっぱりしている。
理由は簡単で、最近では電子書籍とかも売られているし、何より県立図書館で本を借りることができるから、もう、そんなにいらないわけで、結構小ざっぱりとした部屋なんだ。
話を戻すと、それを見た、俺は。
「じゃあ、下に行ってるわ」
「ああ」
俺たちの子供部屋は2階にある。俺は一階のリビングに行った。
「ああ、貴敏」
階段付近でばったり、おかんに出会す。おかんは肥えた体つきをしているが、その実、料理が上手だったり、お菓子作りが趣味だったり、小さい時はいつも甘えさせてもらった、俺の大好きなおかんだ。
「今日の昼はいらない、コンビニで買ってくるよ」
おかんは柔和な笑みをした。
「そう?」
「うん。ちょっと買いたいものがあるし、ちょっと出かけてくる。今日は快晴だしね」
「コロナとかあるから気をつけてね」
「ああ、わかってる。帰ったら手洗いうがいはちゃんとするよ」
そして、俺は財布を持ってうちを出た。
今日は7月じゃないんかってぐらい暑かったが、外の空気は思いの外気持ち良かった。
「うーん。快晴だなぁ」
そして、俺は家を出る。うちの家は宅地で、周りに田んぼがある。今は、稲は作ってはいないが、5月になれば水を引いて、稲が植えられるんだろうな。
なので、俺らの家はちょっと小高く建てられた家なんだが、あくまで周りの田んぼより高いってだけで、そんなに高くはない。
そんな家を下って小道に移動すると、国道のほうの道からおばさんが歩いているのが見えた。俺はそのおばさんを通り過ぎて、小道から国道に………
「あら?」
突然、おばさんが声をあげた。
俺のことだろうか?
思わず振り向く。するとばったり目があった。
「ねえ、あなた藤原貴敏くん?」
「はい。そうです」
そうは言ったものの、俺はこのおばちゃんのこと知らないぞ?
「失礼ですが、どなたですか?」
「私はほら、舞花の母ですよ」
舞花?
誰だそれ?
「あの、舞花さんて方に私は心当たりはないんですが………」
そう言ったら、そのおばちゃんは驚いた顔をした。
「本田舞花ですよ?お隣さんじゃない!?なんで知らないの?」
「ああ、本田さん!?」
本田さんと言ったら、うちの隣の家の住人だ。本田さん毛は石垣の上に作られた家で、子供の頃とはその石垣を素手で登れるか競争したものだ。
俺たちが夢中で石垣を登ろうとすると舞花に、やめようよう、泣き顔で窘められたものだ。
「で、あなたは本田のおばちゃん?」
そういうと本田のおばちゃんは明るい表情で言った。
「そうです」
「ああ、奇遇(きぐう)ですね。こんなところで会えるなんて」
それに本田のおばちゃんはクスクス笑う。
「私たち近所同士ですよ?」
「いや、でもあなたのところは普段、車を使うでしょう?」
「あなたのうちもね」
そうして二人して笑い合う。
「でも」
本田のおばちゃんは詮索(せんさく)好きな少女のような笑顔でジロジロと僕を見た。
「すっかり大きくなって!見違えたわ、貴敏くん」
「どうもです」
一応会釈をする。
「今日はコンビニの帰り?」
「ええ。そうよ」
「何買ったんですか?」
「えーと、明日のパンでしょ?プリンでしょ?牛乳でしょ?あ!いけない!早く帰らないと牛乳が痛んでしまう!じゃあね」
「はい、また」
僕は手を振ったら、本田のおばちゃんはニヤニヤしながら教えてきた。
「ここだけの話、お隣さんのよしみで教えてあげる。舞花ってプリンに目がないのよね。安いプリンを買うと怒るんだから。じゃあね」
「はい」
どうでもいい情報だった。大体舞花と遊んだのは小学生に入る前の出来事だ。今、何をしているかなんて、どうでもいい。
どうでもいい、か。
お隣さんなのに、俺は本田家のことをよく知らない。何がどうなっているか知らない。
一応、舞花のことは知っている。小中高一緒だったし、中学生の頃から清純派美少女として名が通っていた。
しかし、だからなんだってんだ?
ゲームやアニメは幼なじみの異性とは仲良しだが、現実はそうではない。幼なじみだからと言って、いきなり挨拶すれば失礼にあたる。
舞花とはクラスも一緒の時もあるが、むしろ必要以上に見ない風に心がけていた。あの凛々しく(りりしく)、美しい顔立ちなんだが、記憶は曖昧(あいまい)だ。学園のアイドルっていうだけで、いろんな2次元の美少女たちが溶接されていて本当の素顔はあまり思い出せない。ただ………。
ツンとした態度だった。クールビューティーって言うのかな。そんな感じ。ま、いいでしょう。女子よりも今は飯だ飯だ。
そう思い、俺は近場のコンビニへ向かった。
コンビニで弁当を食べ終えた俺はスマホで電気書籍を読んでいた。
現代社会に魔法が登場する2000年代のラブコメだが、電気書籍にコンプリート版が出ていてそれを買ったのだ。15000円ぐらいしたものだが、途中まで読んでいて今のところ大満足だった。
中学生の頃、4、5巻読んだくらいなものだが、面白くて思いっきり読み耽ってしまった。勇気を出して買ったのだが、大正解だったな。
もう4月だと言うのに少し汗ばむ陽気を感じる。だが、今は5時、だいぶ涼しくもなってきた。
「出かけるか」
今日は散歩にしよう。千種学校付近を歩くとするか。
家を出る。すぐに夏の気配がする春の空気を感じた。
「いい空気だ」
そして、そのまま小道を出て、道路に入り、通学路用の道路に入り、ちょっとした坂を登っていた。
懐かしい。この坂、小学生の時は結構苦痛だった。上りもしんどかったが、下りもスピードが出てしまい大変だった。すべてが懐かしい。
その坂を登っていると向こうから犬を引き連れた女性が現れた。
「あ、まって!ボア!」
いや、犬に引きずられていると言う方が正解か?彼女は犬に引きずられたまま歩き出す。僕は左に避けた。
「あ、すみませ・・・・・・・・・・・」
女性が会釈(えしゃく)をするとまじまじと僕の顔を見つめた。
なんだろう?
よく見るとその女性はかなりの美人だった。絶世の美女と呼んでも相応しくないくらいの綺麗な顔立ちをしていた。
どこかクールビューティーでありながらも品の良さが滲み(にじみ)出ていた。
しかし、僕はこんな美女と知り合いではない。
「あの、どこかでお会いしましたか?」
とりあえず、下手(したで)に出て聞いてみる。
女性はブンブンと首を横にふった。
「さ、いくよ、ボア」
と言いつつ、犬に引きずられながら女性はさっていった。
一体なんだったんだろう?
その日は1時間ほど散歩してうちに帰ってきた。久々にぐっすり寝られた。
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