布 木材が手に入らない!
熱源を手に入れた僕は、喜びと同時に少し焦りを感じていた。
レイラ教授に話をしてから、平らなルルシアを手に入れるのにかかった時間はおよそ一ヶ月半。
あと三ヶ月で、残りのパーツを手に入れてレポートをまとめて、発表しなくちゃいけない。
間に合わないかもって、マズい予感がしてたんだ。
そこで、僕は最悪間に合わなくても、こたつの形ができていれば、乗り切れるって考えた。
こたつの形、つまりテーブルだ(章題は間違ってないよ)!
机は木材で、どの木材にするかはすんなり決まった。
堅くて丈夫、熱にも強くて、最適な素材だと思ったんだ。
でも、自分の力で木を手に入れるって、どうすればいいんだろう?
まさか、一から育てるとか?
そんなことしてたら、レポートを提出できるのは五十年後になる。
進級試験に二度目の人生を費やすつもりは流石になかった。
妥協案として、僕は、自分で木を伐採して加工するのはどうだろうって考えた。
それなら、自分で木を手に入れたってことになりそう。
それで、早速、いくつかの林業の会社に連絡をしてみたんだ。
「あの、木が必要でして、切らせて貰えないかと連絡差し上げたんですが」
「切らせてって、伐採ってことですか、それは難しいですね。木材が必要でしたら、製材所か、卸売店にご連絡された方がいいかと思います」
まぁ、対応はそれぞれだったけど、だいたいこんな感じ。
要は素人にそんなことさせられないから、普通に買いなさいって事。
至極真っ当だと、僕も思う。
そういうわけで、木材を手に入れる目処が全く立たなかったんだ。
そこで木材は一端置いておくことにした。
最悪、本当に言われた通り、加工された木材を買って日曜大工するしかないと思ったんだ。
それでも、なにも提出できないよりかはマシだからね。
それなら、そのテーブルをよりこたつっぽくする方がいい。
パッと見たときに、僕がそれをこたつだと認識する特徴って言ったら、布だった。
テーブルに長い布が掛かってれば、それだけでこたつって言い張ることもできそうなくらい、特徴的な部分なんだ。
さて、布って一言に言っても、本当に色んな種類と素材がある。
天然由来のもので言っても、植物性と動物性があるし、人工的な合成繊維だってある。
それぞれに特徴があって、用途も異なる。
僕の想定した布って言うのは、毛布みたいなもので、断熱性があって、柔らかで、包まって気持ちのいいものだった。
素材の入手難易度と、僕の望む性質から考えると、植物性か動物性が現実的なんじゃないかと思えた。
どちらにせよ紡績加工が必要で、それだけが頭の痛い問題だった。
手先の器用さには、それなりに自信のある僕だけど、糸を作って、それを織るのはかなり手間だと思ったし、時間も限られてる。
なにか、いい方法を探すか、さもなければ今すぐにでも取り掛かるか、課題提出まで三ヶ月を切った時点で僕はまぁまぁ追い込まれてた。
って、話をクノンにしたのが、間違いだったんだ。
「布、ねぇ」
「なにか、いい方法ないかな?」
「それなら、試したいことがあるんだけど、もしかしたら、その問題解決できるかもしれない」
クノンは目を輝かせながら言った。
この時点で、経験から察しておくべきだったんだ。
彼女の名誉の為に言っておくと、普段は気が利いて、僕の無茶振りにも付き合ってくれるいい幼馴染み。
あと、とってもかわいい(クノンの校閲が入った)。
ただ、特殊生体生物(魔物)の事になると、少し常識がなくなる事がある。
そんなわけで、僕は目的も、目的地も聞かされないまま、クノンの「試したいこと」に付き合う羽目になったんだ。
(※まるで、被害者みたいな言い方だけど、ファムが「簡単に布を作りたい」って言ったからだからね! クノン)
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