side美葉菜


「起きろ」


その声で私は心地良い睡眠から引き戻される。

「待って、父さん あと3分だけ…」


「父さんかよ」


呆れたようなイケメンボイス。


父さん、声変わった?

しぶしぶ起きると、


「ぇ、何コレ」


知らない場所だった。

「あ!」

そうだ、私居候しているんだっけ。


で、その家がまさかの桜沢くんの家…


じゃあ、さっきのイケメンボイスは

桜沢くん? 

どうしよう、私寝顔に自信無いのに。

(というか、どの顔にも自信無いけど)


大変、大変、と慌てていつもより念入りに髪も洋服もセットして降りていくと、

「みっちゃ〜ん」小さくて可愛い男の子が飛びついてきた。


「おはよー!僕 進斗 です。小3です。よろしくね〜」

進斗くんは家族の紹介もしてくれるみたいで、

ご飯をかき込んでいる男の子を指差して、


「こっちは蓮兄ぃ。中2」


「よろしく。」


ニコリとする。

さすが桜沢くんの弟だけあってイケメンだ。


桜沢くんはまだ来ていない。


私も席について

「いただきます。」

と食べ始めた。


テレビで情報番組を見ていたおばさん

(桜沢くんのお母さん)から


「みっちゃんは

好き嫌いが無くて良いわねぇ。」


と褒められながら食べていると


「おはよ」


桜沢くんが入ってきた。


きちんとセットされている茶色が少し混ざった黒髪に見惚れていると


「じゃあ、凛斗、みっちゃんと

一緒に登下校ね。」


おばさんの衝撃的なセリフで我に返った。


「は?」


桜沢くんが驚いてる。


もちろん私も。


「だってみっちゃん道分からないし、

部活で朝は早いし

帰りは遅くなるみたいだし、

凛斗もテニス部で大体同じような感じだから問題ないでしょ?」


そっか、凛斗くん男テニだっけ。


「いってらっしゃーい」


おばさんに送り出されて家を出る。


歩いている最中、桜沢くんは無言だった。

駅まで行くと


「一緒なのはここまでな。帰りもそこのベンチで待ち合わせだ。噂になると困るから。」


私を置いてスタスタ歩いていってしまった。


「はあ」


思わずタメ息がもれる。


めっちゃ嫌われてるじゃん私。


こんなんになるんだったら告白なんてしなきゃ良かった。


告白しなければ普通に接してもらえたかもしれないのに。

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