勘弁してくれよ…
side凛斗
“ピンポーン“チャイムが鳴った。
「あ〜来ちゃったかー。」
嫌そうにつぶやく
「え、楽しそうじゃん。蓮兄ぃはなんで嫌って思うの?」
まぁ、蓮斗の気持ちも分かんなくはない。
今までの1人部屋が
進斗と同じ部屋になるのだから。
それにしても突然だった。
今朝、長電話から帰ってきた父が、
「今日からこの家に人が滞在する」
と発表した時は驚きのあまり、
蓮斗がコーヒーを吹き出し、
進斗が椅子から転げ落ちたらしい。
俺は零と美音と図書館に行っていて見ていないけど。
で、俺が帰ってきたときには
既にその「福原さん親子」
を迎える準備が
出来上がっていたというわけ。
それよりも俺が気になるのは
「福原」
という苗字。
確か
この前告白してきた子も福原だったよな。
まてまて
福原さんなら全国にいっぱいいそうだし。
単なる偶然か。
と思っていた俺が甘かった。
チャイムの後に現れた2人。
父と友人だという男の方は
笑いながら父と話しているが、
女の子の方が告白してきた
あの子だった。
マジか…
「可愛い!」進斗が叫ぶ。
「ああ、同感」あんなに文句を言っていた
蓮斗も見惚れている。
「こんにちは、福原です。
よろしくお願いします。」
男の方が俺たちに気付いて頭を下げた。
女の子の方も頭を下げる。
「こんにちは!お名前はなんていうの?」
ハイテンションな母が話しかける。
「福原美葉菜です。」
「美葉菜ちゃんね、んーと、
みっちゃん!
みっちゃんね!よろしく!」
テンションの高い母はさらに質問を続ける。
「高校生だよね!どこの高校?」
「御星です。」
「あら、御星!うちの息子も御星よ!
A組の桜沢凛斗って知ってる?」
「あ、はい、もちろん 」
福原が若干顔を赤くする。
幸い母や弟たちには
気付かれていないようだが
勘弁してくれよ…
心の中で呟く。
ベタな少女漫画じゃあるまいし。
「あら、知っているのね」
「はい。」
そりゃ知ってるだろ。告白したんだから。
「良かった。
知ってる人がいた方が心強いでしょ。
さ、さ、みっちゃん部屋に案内するわね。」
父親2人はまだ話していたが、
母が福原を連れて行ったので
その場も解散となり、俺も部屋に戻った。
“コンコン“
「はい」
ドアを開けて遠慮がちに福原が入ってきた。
「何?」
出来るだけ不機嫌そうに反応すると
一瞬怯えた顔をしたが
「今日からよろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げた。
「あのさ、ベタな少女漫画じゃあるまいし、俺お前のことあんまり好きじゃないから
変な期待はしないで。
あ、後学校では絶対に秘密な。」
一気に言い終わると
「じゃ」
部屋の外へ追い出した。
これでいいんだ。
どうせいつかは出ていく。
変に期待持たれて勘違いさせるよりは
冷たくした方が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます