Depression

side美葉菜


「美葉菜、お疲れ〜」


教室に入ると千晶が笑いながら出迎えた。


「千晶、何がお疲れなの?」


疲れるようなことは何もしていない。


「だって、桜沢くんに告って 

振られたんでしょ。」


⁉️ 日直で早く来たはずの千晶が

告白騒動のことを知ってるわけがないのに、


「山下とかさやりんとかが話してたよー」


あの口軽たちめ〜💢 

心の中でクラスメイトたちに恨みを送る。


「やめときなって、あんな顔と頭だけがいい人なんて。何も言っていないけど、

心の中でうちらのことE組って

馬鹿にしているんだから。」


確かに、

うちのクラス いや、学年でも

五本の指に入るほど可愛い谷ちゃんだって

Eってだけで振られている。


ましてや、可愛くもない私からの告白…


実るわけないじゃん。


なんか、泣きたくなってきた。


溢れそうになる涙を隠すため、ポケットからイヤホンを取り出して、お気に入りのケースがついたスマホの電源を入れた。


流れ始めたのは、今流行りのアイドルの曲。


彼女たちの可愛い声がイヤホンを伝って耳から入ってくる。


いつもならテンション上がるのに、

今日はネガティブへの導入剤。


私も彼女たちみたいに神的に可愛かったら、


その中の何人かみたいに頭が良かったら、


もっと言うと早乙女さんみたいだったら…


いつも桜沢くんと一緒にいる女子を

思い浮かべる。


頭良くて可愛い、

顔小さくてスタイル良くて 

神かよっ!て感じ。


まぁ持ってるもの、素材が違うからなー。

鏡を取り出して外見を見る。

(朝も見たけど)


重い漆黒の髪。

唯一気に入っている目が大きいところは

顔の他のパーツと合わさるとアンバランス。

顔もスタイルもバリバリの標準レベル。

というか…

スタイルは最近少し、

ほんの少しだけど太ってきたっぽい。

体が重くなっている。


嫌なことがありすぎて、考えれば考えるほど沼にはまっていく気がする。


一目惚れだったけどしてから

二週間とちょっとで

こんなにも桜沢くんに

恋してるんだと自覚した。


もう少し早く自覚したかったなー。


もう少し早ければ告白しなかったのに 


振られたら諦めなきゃいけないじゃん。


まだこの想いを大事にしたかったのに。


…後悔したって仕方ないのに。






結局、


あのあと 放課後になっても

立ち直れなくて


千晶と大地、浩ちゃん巻き込んで

カラオケに行った。


今日は勉強はしないことに決めた。


気分じゃないし、


明日休みだし。


「ただいま〜」


のれんをくぐると


「おかえり!」


常連さんたちのの大合唱。

商店街にある小さな食堂。

それがウチ。


ほとんど常連さんしかいない店内。

暖かいけど今は少し鬱陶しい。


「どうした、美葉菜ちゃん?顔暗いぞ〜」


「うん、ちょっとね。」


「色々あるんだよ!高校生にもなると」


本当に色々あった。

あの後、授業の合間とか昼休みとかに

私にお客さんが訪ねてきた。

それもたくさん。

そのほとんどが


「よくE組なのに告白したね。」とか、


「高望みしすぎー」とか 


そんなことを失恋したばかりの女子に

わざわざ言いにきたんかい!

とツッコミたいくらいの失礼な訪問だった。


回想している間に話しかけてきたおじさん2人はいつの間にか始まっていたカラオケに

参加していていなかった。


「大丈夫か」

父さんが厨房からとんかつ定食を持ってきて声を掛けてくる。


「うん、ありがとう。大丈夫かな」


無理やり笑顔を作る。


心配させるわけにはいかない。


思い切り「いただきまーす」

とキャベツをかき込んだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る