5秒で失恋

side美葉菜


「いらない」


その人は私が一週間かけて書いた手紙を

たったの5秒ほどちらっと見ただけで

一言言うと

友達と一緒に歩いて行ってしまった。


「…💢」


呆然としたのも確かだが、

その後すぐに怒りが湧いてきた。


「待てっ!」

殴りかかろうとした私を


「ちょ、ちょ、福ちゃんダメだって」


後ろから浩ちゃんが腕を押さえてくる。


「だって、人がせっかく一週間かけて書いたラブレターを💢」


「うん、うん、お疲れ」


浩ちゃんが私の頭を撫でようと

腕を押さえていた手を退けた途端、


私はポケットに入っていたものを


その人に向かって投げつけた。


コン!



「痛ってぇ!」


見事頭にストライク。


女バスの実力を舐めんな。

投げるのは超得意。


「イケメンで頭がいいからって んんん!」


捨て台詞を叫んだが、

途中で口を塞がれ回収された。





回収されてたどり着いた先は体育倉庫の影。


「ちょっと!何すんのよ!」


口を塞がれていた手が取れた瞬間

浩ちゃんと

もう1人の男子、大地に文句を言う。


「だって、そうしないと福ちゃんあの人に

殴りかかってたじゃん。」


「そうそう」


大地も同調する。


「別にいいじゃん」


「ん?いいのか?あいつに嫌われても。」


「よくないよぉ😭」


ポロポロ涙をこぼすと


「よしよし」

浩ちゃんが慰めてくれた。


私と浩ちゃんは小4からの幼なじみ。

親の転勤で東京に来た私が馴染めたのは

浩ちゃんのおかげでもある。


全国的に名門校であるこの御星学園に

入るために2人ともぐったりするまで

勉強した。

合格した時は…嬉しかったなぁ。


「行くぞ」


大地は男バスのエース(自称)

少し乱暴なところはあるけど、

見てるところは見てくれてる。


すごくいいやつ。 


今だって、「HRに遅れるぞ」


ちゃんと見捨てない。


「了解。さ、福ちゃん行こう。」

2人と一緒に昇降口へ歩いて行った。




side凛斗


「何だあれ…」


振ったらいきなり何かを投げつけてきた女子は隣にいた友達らしい男子2人に

回収されて行った。


「珍しいね、

怒って実力行使しようとするなんて」


横にいる零が笑いながら

「はい。」

と消しゴムを渡してきた。 


頭に当たったのは消しゴムらしい。'

“1-E福原“

と記名された白いシンプルな消しゴム。


「あの子、女バスの子でしょ。 

すでにエース候補の子。」

美音も横から消しゴムを覗き込んでくる。


「ま、Eだもんよく知らなーい。」


この学校では高校入試の点数順にA〜Eまで分けられてしまう。高い方がA低いのがEだ。ちなみに俺も零も美音もAだ。


「俺知ってる!最初、一緒にいた人は

パソコン同好会で

途中からの人は男バスの人だよ。」


情報収集が趣味の零がドヤ顔で報告すると、


「そうか、凛斗は高校でもモテ男か。」


美音が肩をポンと叩く。


「それを言うなら美音だってそうだろ。」

 

背が高くモデル体系。

顔も国宝級だと密かに言われている

親友の顔を見ると


「私はきちんと懇切丁寧に 

ごめんね って謝ってるもん。

誰かさんみたいに冷たくしないで。」


「お前ら去年のこと覚えていないのか?」


「あーストーカー事件ね」


「覚えてる。凛斗が振った女子、

可哀想って優しく振ったら

脈アリと勘違いして

付きまとわれたやつだよね。」


「そ、」だから冷たく断っているのに…


「でも入学してから5人目だよ。B組の子、

先輩方2人、

それにC組のゆなちゃん。

あとあの子。」


「C組のゆなちゃんなんて

雑誌のモデルやってんじゃん。

俺だったら即OKしちゃうけどなー。」


「マジ⁈零、タイプ ゆなちゃん?!」


「お前らな…」


本人をそっちのけにして

盛り上がってる2人に呆れて、


「先行く」


と階段を登り始めた。


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