第42話

廊下をただひたすらにまっすぐ進む。どこまでもどこまでも。横にはいくつかの扉があるけれど、それ以外には何も無いし誰もいない。これ、もしかして道に迷った?



「茜、茜、これ大丈夫かな? もしかして迷ってない? 」


「でも、まっすぐ進んで来たんだよ? 迷ったってことはないと思うけど……」


たしかに、茜の言う通り私達は部屋を出て左に曲がった後、右折も左折もしていない。普通なら、どこかで突き当たるところなのだ。なのに、ずーっと廊下が続いているだなんて……。


ここは神様の世界、不思議なことは一つや二つ起こるだろうけどまさかこういう系のものに当たるとは。私のいう、こういう系とは森の中を歩いてると同じ場所をぐるぐる歩かされるような迷惑な現象。



「湊月ー……湊月さーん」


「ん? どうしたの茜」


「ちゃんと前見て、あれ先生じゃない? 」



一人でぶつぶつと考えていると気がつかなかったけれど、茜の言う通り前の方には何やら人影がある。よく目を凝らして見てみるとたしかに白衣を纏っている人の姿が。いくら多忙とはいえ案外会えるもんなんだなーと考えながら足を進める。



「せんせーい!」



茜が遠くから声を張り先生を呼ぶ。ぴくりと驚いたあと、こちらをみる先生の姿は以前よりも酷くなっていた。くまは色味をまし、頬もげっそりとしている。健康そうな時に会ったことが一度もないのが残念だ。というのも、よく見ると目鼻立ちは、まず人ではありえないほど整っている。



「神様は、みんな美しくていいなー」


「ん? なんか言ったか? 」



心の中の言葉のつもりが知らずに声に出ていたらしい。私は、なんだか恥ずかしくなって俯く。先生は、不思議そうにしていたが茜がさっさと本題に入ってくれたおかげで一瞬で話が切り替わった。



「先生、今お時間空いてますか? 」


「すまん、今から会議なんだ。ちょっとなら大丈夫かもしれんが……」



先生が首をひねって悩んでいると、書類を小脇に抱えた女の人いや、神様? がスタスタとこちらへ歩いてくる。



「先生、待たせているので早く部屋に入ってください」



女の人はそういうと私たちに一礼をして、部屋の向こうへと入っていった。先生もまた、私たちにひらひらと手を振ると扉を開けて部屋に入っていった。



「茜、どうする? 」


「うーん、私たち先生以外に詳しそうな人知らないしなー」



「おふたり様は」


「何をそんなに」


「困っているのですか? 」



この特徴的な話し方は…… 私が知り得る人物の中で一人一人区切って読むなんてことをする人達はこの人達しかいない。



「白雨様の従者の方達……!」

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