第41話
「じゃあ、私はそろそろ行くわね!かき氷のことならいつでも呼んで」
小雪はそういうと、片手を振りながら帰っていった。一人が居なくなった部屋は案外寂しいものだ。なんというか、空気が冷えるというか。ひとつの温もりが空間から消える感じ。そんなことを考えていると茜が口を開いた
「いやー、賑やかな人いなくなっちゃったね」
「茜も随分賑やかだけどね」
時に騒がしいくらい、と付け足すことも考えたけど散々それに助けられてきた故に言葉を飲み込む。本当に茜と出会ってから世界が変わったなー。
「小雪の話の復習でもする? 」
「茜にしては真面目だね」
「ん? それちょっと酷くない? まあ、いいや小雪の話に少し気になるところがあって……」
茜の言う気になるところは、私もひとつ心当たりがあった。そして、きっと同じところだろう。私は茜が続きを言う前に食い気味に答えた。
「雨の最高神様と人間のとこでしょ」
「そう! そこ! たしか白雨様って雨の最高神様の息子なんだよね。だとしたら何か関係あるのかなって」
「私も、同じこと思ってた」
「でも、小雪は深く知らないみたいだしどうしよう」
あっという間に復習は終わり。新たなる壁が立ち塞がる。私たちは、結局のところ無知だった。雨の最高神様や神様の世界についてまだ全然知らないことで溢れている。
「誰か、詳しい人とかいないかなー」
「詳しそうな人ならいるけどねー……」
「さすが、茜! いつの間にそんな人脈を? 」
「いや、普通に湊月も知ってるよ」
そう聞いて、はっと気がついた。たしかに、あの人ならなにか情報を知っていそうだ。最高神様の件に限らず、物知りそうな人で私たちが知っているのは……
「先生? 」
「そう、当たり! でも先生絶対忙しいしなー」
一歩前に進めたようで、話はちっとも進んでいない。先生のスケジュールなんて、一ミリも知らない。けれどあの顔つきが空き時間の少なさを物語っていた。簡単に会って話を聞くことは出来ないだろう。
「うーん、ダメもとで行ってみる? お城探検も兼ねて、先生探しに」
茜の提案に私は縦に首を振った。行ってみないとわからない。このまえみたいに偶然、先生の手も空いてるかもしれないし。私たちは、いそいそと準備をすると。部屋の戸を閉める。
「さあ、どっちに行くか」
二人で左右をキョロキョロ見回す。地図には、ざっくりとした全体図しかのっていない。私たちが入ったことのある部屋も数室だけ。歩き回って、廊下を探すしかないか。
「じゃあ、とりあえず左で」
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