第40話

小雪とも一旦お別れか。そう思い小雪の方に目をやるも、ちっとも動きそうな雰囲気はない。それどころか何か話したそうにうずうずとしている。茜もそれに気づいたのか小雪に質問していた。



「小雪、何か話したいことでもあるの? 」


「逆にあなたたちは私に聞きたいことないの? 白雨様のこととか」


「小雪は何か知ってるの?」



何か大切なことを知っているような口ぶりに、思わず反応する。しかし、返ってきたのは思ったよりも素っ頓狂な声だった。



「別に大層な情報じゃないわよ、ただシエロのことも含めてあなた達よりは知ってるからね」


「教えてくれるの? 」


「まあ、そんな有益な情報じゃないけど」



私は茜と顔を見合わせる。有益かどうかなんて関係なしに、まだ来たばかりの私たちに情報は必要。そう思ったのは私だけではなかったようだ。茜と揃って首を縦にふると、小雪は口を開いた。



「そもそも、ここは神様のすむ世界の中でも人間たちに近い。あとは、神様以外に眷属なんかもよく来るわ。」


「似たようなことは朔も言ってた。ね、湊月」


「うん、ここは神様の下っ端が働くとこだって」


あの時は、神様にも下っ端とかあるんだってすごく驚いたっけ。懐かしいなーと思うと同時に下っ端ってどういうこと? とか具体的にどんなお仕事をしてるの? とか色々疑問も増えていく。



「下っ端って……。ほとんどの神様はモルン、強いてはシエロにいるっていうのに」


「そうなの?」


「そうよ、最高神様と最高神様のお側にいるまあまあすごい神様ぐらいよ、他のところにいるのは。そこにいたことのある私が言うんだから間違いないわ!」


「小雪はそこにいたの? 」


「まあね」



小雪は誇らしげにそういうと、なにかを思いついたような顔になって首をひねっていた。しばらく、うーんうーんと考えたあと私たちの方へ向き直る。



「実は、最高神様たちの世界の方に一人だけ、人間がいたの。まぁ、ちょっと特別な人だったんだけど」


「どんな人だったの? 」



好奇心がかき立てられ小雪に尋ねる。しかし、小雪は渋い顔をしてさも聞かれたくなさそうに答えた。



「私、すぐこっちに返されたから詳しいことはよくわかんないのよね。雨の最高神様と関係があるとかないとか。噂話程度で会ったことはないわ」


「そっかー……」



あからさまにガッカリする私たちに小雪は、私だってあんな早く返されるとは思ってなかったしと頬を膨らませた。小雪にも色々あったみたいだ。


「まあ、上にいるよりこっちの方が自由でいいけどね」


小雪は、そういうと眠たそうに欠伸をした。

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