第39話

「湊月が復活してるかな? と思って、かき氷の材料持ってきたの」


そういうと、中からレモン味のシロップと果実の味がする小さなキューブ状のものを取り出す。



「それって、地上のものじゃない? どこで手に入れたの? 」



茜の質問にギクッとし苦笑いをする小雪。たしかに、茜の言う通り地上のものだ。書いている文字は日本語でしっかりバーコードもついている。よくお祭りの屋台で見るような、いわゆる業務用とかいうやつ。



「ま、まあ、私はよく地上に降りるからね」



小雪は、さも知られたくなかったように歯切れ悪くいった。どうしてだろう? 親近感も持てて嬉しいくらいなのに。



「小雪がよく地上行くなら、私たちの意味あるの? 人間が何に困ってるかみたいな任務」


「意味はあるわよ。私、人間の気持ちなんてわかんないもの。どれが早急に解決するべきとかわかんないし」


「そういうもの? 」


「決定的なのは、基本的に私たちは死なないということ。死が分からないものにとって、死が迫ってくる者たちのことは、本当に分からない」



茜が質問して小雪が答える。無理に話に参加しなくてもポンポンと進んでいく会話は心地よい。会話には参加していても聞くだけの方が落ち着く、そんな人もいるかもしれない。私みたいに。



「まあ、あなた達が呼ばれたのは単純にそれだけって訳でもないだろうけどね……まぁ、そんなのはどうでもいいわ! とっとと作りましょ!」



そういうと小雪は席をたち、比較的スペースのある所へ移動する。何度かその場でステップのようなものを踏んだ後、踊りながら器の上に氷を降らせる。



「魔法みたい……!」


「ねー! 小雪もすごく楽しそう! 」



見ている私たちも、作っている小雪も幸せになれるだなんてまさに神技。踊りながらシロップをかけ、トッピングもする。普通なら手元が狂いそうなのに、小雪のかき氷はそのバランスも絶妙だ。



「まるでショーみたいだね」



茜の言葉は的を射ている。これはもはや一種のエンターテインメントだと感じるほどに素晴らしかった。



「大変だと思うけど、これでも食べてがんばって」



私たちはお礼をいうとすぐにかき氷を頬張った。冷たいものを食べているはずなのに心は温かくなっていく。白雨様にも食べさせたいなー、きっとこれを食べるだけでも少しは気持ちも上へ向くだろう。



「白雨様のところに持ってたら、喜ばれるかな? 」


茜と小雪は顔を見合せると、こくこくうなづいた。よし、白雨様のところへ持って行って一緒に食べよう。鼻歌でもしそうになるほどルンルンしていると、ある疑問が浮かんできた。



「小雪は、また来てくれる? それとも忙しいかな」


「どうせ、白雨様に渡すためでしょ。呼んでくれたらいつでも届けにいくわ!」



頼もしい神様だ。

私は、一安心して最後の一口を口に放り込んだ。







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