第38話

ごくりとお茶を飲み干し、息をつく。茜に言おうか言わないか何度も同じ考えをループしていた。茜に知ってほしい。でも、うまく説明できる気はさらさらなかった。



「茜は聞きたい? 」


「湊月が話したいなら聞く。でも私はなんでも話せる仲が真の友達なんて思ってないから」



だから安心して、と言って茜は微笑んだ。引っ込んでいった涙のダムがまたもや決壊しそうになるのを必死に堪える。焦る必要はない、話したい時に話そう。安心した途端、白雨様のことが気になりいつ行こうかなと考える。



「今度は何考えてるの? 」



茜は、私の顔を見てにっこり笑った。そんなに顔にでてるかな? それとも茜は超能力者? そんなおバカなことを考える暇もでてきたことに、心の復活を感じる。



「私も茜になりたい」


「えっ!? いやいや湊月は湊月だから良いんだよ!」


「うん、私は茜になれないし、なれたところでそれは私じゃない。それは分かってるけど、白雨様が一緒にいて安心できるような人になりたいなって」



まあ、できることなら茜になりたいくらいポジティブさや明るさは羨ましいけれど。


茜は嬉しそうに、にこにこ笑っている。いや、にこによりも、ニヤニヤの方が近いかもしれない……

茜と二人のんびり、ゆったりしているとまたもやノックの音。白雨様が泣いて戻ってきたらどうしようかと心配になる。



「私がでる、湊月はゆったりしてて! 」



茜のお言葉に甘え、そのまま椅子に座りひなたぼっこをする猫のようにぼーっとしていた。しかし、次の瞬間、聞いたことのある大きな声が聞こえてきた。



「あ、茜! 湊月結局大丈夫なの?! 全く人間の体はか弱いんだから」



この声は小雪だ! なんとお見舞いに来てくれたらしい。ただこの│の勢いは凄まじく、あの茜でさえ押されている。



「え、なんで反応ないの? え、湊月しんだ? もしかして、湊月死んじゃったの? 」



茜がぼーっとしてるおかげで小雪は盛大に勘違いをしている。その声には焦りが滲んでいて、少し申し訳なくなってしまった。



「い、や、湊月は中にいるから、大丈夫。死んでないよ、全然元気」



やっとフリーズから解けた茜が返事をしてくれた。すると、ものの数秒で小雪がこちらに顔を見せる。



「もう、ほんとに心配したのよ! 人間の体なんて弱っちいんだから大切にしなさいよ、全く」



口ではそう言うけれど、顔にはっきりと安堵の色が浮かんでいる。こんなに気にしてくれるなんて有り難い。心からそう思った。



「小雪、そのバッグはなに? 」



茜の質問を聞くなり、小雪は不敵に微笑んだ。

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