第32話
「これからどうする?」
「とりあえず、部屋に行ってみよう。私達の」
白雨様も寝るようだし、邪魔をしては余計に機嫌を損ねてしまうだけだろう。私達は、地図とにらめっこしながら自分達の部屋へと向かう。すっかり忘れていたけれどここはお城の廊下。改めて、意識すると緊張が戻ってくる。
「ねぇ、白雨様のことなんで閉じ込めてるんだろ」
「そんなの、あーやって逃げ出すからじゃない? 」
「でも、あの従者の人達そんなことするようには見えなかったけど……」
私は、茜から返ってきた返答に疑問を浮かべる。分かりそうで分からない。答えがするりするりと私の手から逃げていくようだった。
「おい、そんなとこで立っていると迷惑だ」
低く、少し不機嫌そうな声が頭上で聞こえたかと思うとそこには先生が疲れた顔で立っていた。
「あと、白雨様の話をペラペラと喋るんじゃない」
「お城の中でもですか? 」
「城内だからといって信用出来るものだけとは思わない方がいい。もう部屋もそこだろ」
先生が言う通り私たちの部屋は、もう目の前だった。先生は、気づかなかったのかとため息をついている。
「なにか、質問があれば答えよう。時間が空いたしな」
いや、先生は寝てくださいと言いたくなるほどその顔は疲れていた。きっと、先生の実年齢に十歳加算したのがこの顔だろうと思うほどに。
「いいんですか! お願いします」
茜は素直にそう返事をすると、ドアノブに手をかける。すると、扉がほんの一瞬、熟したライムのような緑色に光った。私も、茜も呆然と扉を見つめる
「あー、このシステムか。詳しいことは知らないが、部屋の主じゃなきゃ開けないらしい」
さ、さすが天界。地上にも、オートロックなんかはあったけれどこんなに便利なものは存在しない。どうでもいいことに茜と二人で感心していると、先生に早く部屋に入るよう促された。
「白雨様を閉じ込めているんですか? 」
茜らしくド直球だ。これで、先生が首を縦に振ったとき、私に止めれる勇気はあるのだろうか。誰かが心臓を思いっきり揺らしている。
「閉じ込めている? そんなことは、ないと思うぞ。ただ、決まって夜になると部屋から、更には城から逃げ出そうとするから夜中は厳重に鍵を閉めているが……」
白雨様は、まだ五歳。大人にとっては、鍵を閉めるだけであっても、小さな子供にとっては息苦しい閉鎖だろう。
「あ、あの、鍵を開けるっていうのは……」
「残念だが厳しいだろうな。あんな身分の高いお方は
分かるだろ?と先生はこちらへ視線を送る。私は一言も声を発することが出来なかった。
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