第31話

「うわ、さ?」


私達は、なにかやらかしてしまっただろうか? 特別、いいことも、悪いことも、していないつもりだったけれど。


「あなた達は誰ですか? 」



「私達は」


「白雨様付きの」


「従者にございます」



茜の問いかけに答える三人は、やはり一文を三人で話していてなんとなく和む。私は、気になってしょうがなかった質問をぶつけてみた。


「あ、あの、失礼ですが性別は? 」



「どちらでしょう」


「貴方達の判断に」


「委ねます」



上手くかわされてしまった。本当に神話にでも出てきそうな中性的な顔立ちで、可愛いとかっこいいを兼ね備えたような美人だ。そんな綺麗な人を見れば性別が気になるのは当然のことだろう。


「あ、白雨様が! 」


茜の声で下を向くと、白雨様がうーんと伸びをしているところだった。こ、これはまた逃げ出すのでは無いか……。


「お腹へった。お前たち誰だ」


白雨様は、そう言うと端正な顔を思い切り歪めて不機嫌な顔になる。それでも、歪んだ印象より貫禄があると捉えられるのはやはり最高神様の息子だからだろうか? とりあえず、起きた途端に逃走なんてことが起こらず安心した。


「いい匂いがする……」


「え、私? 」


「違う、服」


そういうと、私の服の裾をすんすんと嗅ぎはじめる。その仕草は、先程までと全く違って、子どもらしさが感じられる。まさか、かき氷の匂いが染み付いているのだろうか。私には全く分からないけれど。


「白雨様」


「お疲れのことでしょう」


「部屋に戻りましょう」



三人の従者は、逃がさまいと必死に訴えている。お約束の、三人で一文話法ではあったものの、さっきまでの穏やかさはどこかへ行き、早口で話しかけている。



「また僕を閉じ込めるつもりか」


白雨様は、強く低い声で従者達へ言い放った。しかし、その奥に子ども特有の泣く直前の弱々しい声が混ざっているのを私は聞き逃さない。この子は、寂しいの? 直感的にそう感じた。そういえば、天界モルンにご両親が居ないのなら寂しくて当たり前……。



「お前たちも、僕を閉じ込めに来たのか」


白雨様は、怒りとほんの少しの寂しさの混ざった声で私達に問いかける。うんともすんとも言えずにいると、白雨様は一人で歩き出す。


「気分悪いから寝る」


それを聞いて三人の従者は、揃ってため息をついた。私達の方にご迷惑をお掛けしましたとお辞儀をする。そして、白雨様の部屋、私と茜の部屋の場所を記した地図を渡してくれた。


「それでは、また」


「近いうちに」


「会いましょう」


私と茜は、三人が釈然と歩いている廊下をただただ見つめていた。

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