第30話

そのまま、一直線にお城へと向かう。こんな素敵な街に来てから一度も、まともな観光が出来ていないのは寂しいことだが地上の様子を思うとのんびりしていられなかった。


「何用だ?」


屈強そうな、門番に尋ねられて思わず後ろに下がる。そうか、今までは先生や朔と一緒だから怪しまれなかったけれど、私達だけじゃ……。


「雨の最高神、白雨でしたっけ? その方のお世話を担当する人間です」


「そ、そうです」


茜は全く物怖じせずに、キッパリ答えた。門番は怪訝そうな顔つきになると側にいた気の弱そうな男の子に確認してこいと指示を出している。しばらくの間なんともいえない沈黙が続いた。


「そちらの人間は、お通しくださいとのことです! 」


「そうか、入っていいぞ」


ぶっきらぼうに門番は言う。もう少し、疑ってすまなかったとか言ってくれればいいのに、なんて思いながら扉の向こうへと足を向ける。朔や、先生と来た時は、すたすたと歩けたお城。茜と二人だとなんとなく心細くて弱々しい足取りになってしまう。


「湊月、どこの部屋行けばいいかわかる? 」


「ううん、全く」


「だよねー」


あはは、と二人で空笑いをする。誰かが、廊下を歩いて来たらその人に尋ねよう……茜が。私たちは、とりあえずまっすぐ廊下を進む。この前来た時とは打って変わって全くといっていいほどに人の気配がない。それは、怖くなるほどに。


「あ、れは……誰?」


「近づいてくるね、あの人に聞いてみよ!」


「なんか、すごい速さじゃない? 誰かから逃げているような」


私の読みは当たっているようで、後ろからも数人が走ってきていた。そして、前を走っているのは子ども? まさか、あれが雨の最高神様の息子、白雨様?


「茜、きっとあの子が……」



「湊月! 危ない!」


茜の声とほとんど同士に小さな男の子が、私へ激突した。私は全くの無事。それよりも激突した白雨様? が目の前で倒れている。


「やっと、とまった……」


「御協力感謝します」


「あなたたちは?」


追手の人達は、三人組で中性的な顔立ちをしていた。ひとつの文を三人で言っている。普通、最高神様の息子が倒れていたら怪我の心配とかが先ではないだろうか。神様事情は知らないけれど。


「私達は、たぶんその子だと思うんですけど、白雨様という方のお守り? を任された者です」


茜の言葉に、三人は目をぱちくりさせた。その後、顔を見合わせると、こくこくとうなづく。動きが揃っているのが少し怖いと感じたのは秘密だ。


「なるほど」


「あなたたちが」


「噂の人間」



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