第29話
久しぶりに夢をみた。そもそも寝るのも久しぶりだけど。夢の中で夢だと自覚している。これをなんていうんだっけ?
『湊月、人を大切にしなさいね、特に近くにいてくれる人は』
『うん、もちろんだよ! なんでいきなりそんな話? 』
『湊月には、おばあちゃんと同じ思いをして欲しくないからね……』
続きをみたい、そう思った瞬間見える景色は真っ白な天井へと変わった。二度寝をしようとしてみてもやけに目は冴えているし、寝れたところであの夢を見れる気は全くしない。まだまだ、おばあちゃんとの会話で思い出し足りないことがあるのに。
「つき、みつき、湊月ー」
「あ、茜どうしたの? 」
「軽く十回は読んだ気がする。えっと、懐かしい夢見たから湊月も何か夢見たかな、と思って」
茜も、同じような夢を見たのか。もしかして、おばあちゃんの友達っていうのは茜のおばあちゃん? まさかね。
「それって自分で、夢を見てるって自覚してる夢? 」
「うん、それ明晰夢っていうんだよ」
めいせきむ? 初めて聞く単語に、興味が湧いて調べてみた。すると、夢を操ることができる、夢を自覚している、他にも色々かいてあったが、いくつか怪しい感じの情報もある。なんとなく嫌な予感がして身震いした。
「そろそろ行こっか 」
茜は、もう夢について興味がなくなったらしい。相変わらずコロコロとマイペースな。私たちは、髪を梳かしたり、着替えたりして部屋を出る。
「あいつの世話、人間が担当するんだってぇ」
「あいつって言ったら怒られるよー、ふふふ。人間には無理でしょ、うちらで無理なんだし」
「だよねぇー」
気味の悪い声が聞こえると思えば、この前にお城であった女の人たちだった。彼女達は、笑いながら私達がいた部屋の隣の部屋へと入っていく。茜は前回の行動を反省したのか、ぐっと下唇をかみ堪えていた。
「見返せるくらいに、がんばろ」
私が、言えることはそれしかなかった。元より、一生懸命に励むつもりだった任務だが、さらにやる気にさせてくれて感謝する。それくらいの気持ちでいた方がきっと楽だ。
「湊月の言う通りだね、怒っててもしょうがないや」
「そうよ、きっとあいつらお役御免になったのね。私は湊月たちを応援してるわ」
気がつくと、ホテルのフロントのような場所にいて、小雪も会話に混ざっていた。私達は、お礼を言って、ふと気がついた。
「人の世でいうお金みたいなのはないわよ」
人間って皆同じ質問するから、聞かれる前に答えちゃった。と小雪は笑っている。
私達は、お礼をいうと最高の居心地だった宿を後にした。
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