第26話
朔と一緒に部屋を出て、廊下を歩く。朔に、聞いたら教えてくれるだろうか。雨の最高神の息子とかいう子のこととか、その母親のこととか。
「朔、もう少し詳しく教えてくれないですか? 」
「敬語じゃなくていいぞ、落ち着かないから。うーん、部外者には言ってはいけないんだがもう湊月達は完全に関係者だからな……」
うーん、うーんとずっと唸って考えている。こんなに悩むということはすごく大きな秘密かもしれない。茜が、なんかワクワクするねと耳打ちをしてきた。あまりにも悩むものだから、前を歩く朔が他の人に何度もぶつかりそうになっている。
「前は、こんなに人いなかったよね」
どうやら茜も同じことを思ったらしい。以前来た時は、感じ悪い女の人二人に出会っただけなのに、今日は流れるように人々が廊下を歩いている。
「まさに、皆あいつの対応で忙しいんだよ」
朔は、そう言うと頭を抱え込んだ。見ているのが可哀想になる程だが、こんなに悩んでいるからこそ、どんな秘密か好奇心を刺激してくる。
「まあ、とりあえず休めばいいさ。二人ともだいぶ疲れた顔してるしな」
たしかに私達は、自分でもわかるくらいに疲弊した顔をしてるだろう。ただ、朔も同じかそれ以上の疲れの色が表情に現れていた。綺麗な目の周りのクマが特に目立っている。私達なんかより、朔の方が休息を必要としているだろう。
「気づいてるかもしれんが、この
「夜がないのは、何となく分かってたけど、ちゃんと寝るんだね、どこで寝るの? 」
茜は、スラスラと敬語を使わずに言葉を紡いでいく。私はなんだかむず痒くて話そうとすると緊張してしまう。
「寝る場所は、家を持っていたら家だが、なんせ忙しい神が多いから持っていない奴もたくさんいる。そういう奴は、他の友達の家を借りるんだ」
俺も家は持っていないと朔は付け足した。なるほど、家は友達に借りる、泊めてもらうってことか。いや、待てよ、来たばかりの私たちに友達なんて。
「なるほど、小雪ちゃんに泊めてもらえばいいのか!」
茜の言葉にはっとした。私たちにとって一番友達に近いのはたしかに小雪だろう。一つ問題があるとすれば小雪が家を持っているかだ。私達は、かき氷屋の屋台のようなものしか見た事がない。
「小雪の両親は、地上でいう宿屋のようなものをやってるからな。小雪に世話になるといい」
どうやら茜の予想は当たっていたようだ。家を持っていない人もそれなりにいるこの
そんな寂しいことを考えながら、私達は小雪の屋台へ向かって足を進めた。
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