第25話
私は、茜に視線を送る。私の意思はもう固まっていたから。茜も私の想いを汲み取ったのか、力強く頷いた。
「覚悟はできています。お願いします」
茜と揃って頭を下げる。力を込めて握っていた手は爪がくい込んで痛かった。先生の方を見ると、ばちっと目が合った。心の奥そまで見透かすような視線に思わず目を逸らしたくなるが、ここで逸らしてはいけないとまっすぐに見つめる。
「そうか、二人とも覚悟ができているならいいだろう。よろしく頼む」
「ありがとうございます! 」
私も地上の人達の役に立つことができる。それを実感してはじめて
「あった、これだ」
先生は、大量のプリントから今回の豪雨の原因を調査した紙を取り出す。いやに、準備がいいな。この早さは、私達が地上へ戻る前から調査を始めていたのでは?
「あ、あの」
「これを見てほしいんだが……」
私の自信なさげな声は、先生の声に掻き消された。残念だけれどまた聞くチャンスはあるはずだと自分を励ます。隣りでククッと笑っている声が聞こえ、そちらに目をやると茜と朔が一生懸命、声を殺して笑っていた。茜め、さっきまであんなにしおらしかったくせに。朔なんてもはや空気だったくせに。私は、恥ずかしさを誤魔化すように心の中で文句を言う。
「おそらく、雨が降り止まないのは、最近上からここに来た雨の最高神様の息子が原因だ」
「え、原因は子どもなんですか? 」
調子の戻ってきた茜が尋ねると先生はそうだ、と頷いた。まさか、あの酷い豪雨が子どもの仕業だなんて。そう考えると私は非力だなと痛感する。
「ただの子どもじゃないんだよ、雨の最高神様の息子ってだけでも強力なのに、あいつの母親は」
「朔、ペラペラ喋りすぎだ。お前は、昔から勢いで物事を進めようとする癖があるからな」
本当に仲がいいな。ってそんなことを考えてる場合ではない。どうやら問題の子の母親に何か秘密があるのだろう。こんな中途半端なところで話が途切れると無性に気になるものだが、あの先生に聞いても教えてはくれなさそうだ。
「詳しく言うと、雨の最高神の息子の様子を見て話し相手にでもなって欲しい。場所は、朔がわかるはずだ。とりあえず、予定の任務は終わったんだから休んでいいぞ」
そう言うと先生は部屋を出ていった。前回会った時もそうだが、忙しそうな人だ。先生こそ休みが必要なのでは?
「俺らも行くか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます