第21話
一気に心配していたことが吹き飛び、心が軽くなった私は結局、小雪のかき氷を食べることにした。かき氷なんていつぶりだろう。友達のいなかった私には夏祭りや、屋台に縁がなかった。最近ではふわふわかき氷が流行っているらしいけれど、私の記憶は小さな頃のざくざくしたかき氷で止まっていた。一口目をスプーンですくい口へともっていく。
「っ……!」
私の想像していたかき氷と全くと言っていいほど違う舌触り。驚きすぎて言葉を失った。ほとんどが雪のようなふわふわとした氷で、所々にキューブ型で果物の味がする氷が散りばめられ、そこにレモンのような甘酸っぱいシロップがかけられている、それはまさに神のお菓子。
「ほら、食べてよかったでしょ」
「さすが、私のかき氷だわ」
茜も小雪も得意げに私の顔を覗き込む。クルムは、さっき居眠りをしていたというのにも関わらず私の膝の上ですやすやと寝息を立てている。
「話は変わるけど、なぜあなた達は
小雪に聞かれて、茜と私は一連の流れを説明した。もちろんかき氷を頬張りながら。まあ、ほとんど喋っていたのは茜だったけれど。
「なにも、こんな時に来なくてもね、いや、こんな時だから? 」
小雪は、不思議そうに何やら考えている。なんとなく嫌な予感がする。嫌というより、良くはなさそうという感じだが。小雪は頭を振ると、まあ、頑張りなさいよ。と、少し引っかかる言葉を私たちにかけて次のお客さんの対応へ向かった。
「茜、そろそろ行こう」
「うん、クルム起きて」
眠たそうなクルムを起こして乗せてもらう。そして、行き先を伝えようとして、考える。クルムは、その場所を聞いてわかるのかな? と。
「あかが、あんないできるもくね? 」
クルムは確認するように尋ねる。茜が案内できるとはどういうことだろう。しかも、それをクルムが知っている。茜はぎこちなく頷いた。一難去ってまた一難、いや一謎去ってまた一謎か。
「しっかりつかまるもくっ、はやいもくよ」
街を縫うようにして、クルムは飛んでいく。せっかく神秘的な街並みだったのにあまり探索できなかったのが残念だ。しかも、前回乗った時よりもスピードが速くなっている気がする。そしてとうとう地上が見えそうだ。
「湊月、みて、これ……」
私と茜は、地上の様子を見て絶句した。
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