第17話
私達は、部屋を出てお城の長い長い廊下をひたすら歩く。お城の中も白が基調で清廉な空気が漂っているように感じた。こんな綺麗なところにいると足取りも軽くなる。思っていたより簡単そうな任務でホッとしているからかもしれないけど。
「ほんっと、どうにかして欲しいわ。あのガキ、五歳にもなって、何をしてもぐずって本当にあの方の息子なのかしら」
廊下はよく響くからだろうか。数十メートル奥からこちらへ向かってくる女の人二人の声が聞こえてくる。それも、愚痴のような話。ああいうタイプは特に苦手だな。私のような気の弱い人見知りにとって、ズケズケと人の愚痴を言うような人は天敵そのものだ。
「ちょっといい身分だからって甘やかされてんのよきっと。これで、私達の評定下がったらマジで許さん」
「あのご身分じゃなきゃ殺してるわよ」
本当にここが神様の世界、
「嫌な感じ」
聞き慣れた声に、顔を上げると
「失礼のないようにと言っただろ」
先生は、そう言ってお咎めの視線をこちらにくれる。いや、だから私じゃないです。私にあんな勇気はありません。誤解をとこうと、言葉を探している私を尻目に茜は言った。
「言ったのは、
これって茜があやまることなのか。誰のことを言っているかは分からないけれど、こんな公共の場で不快になる愚痴を言っていたあの人たちの方がよっぽど失礼な気がする。そう思ったけれど上手く声に出せない。久しぶりに悪意に満ちた棘のような視線で睨まれて、私はすっかり縮こまってしまっていた。
「まあ、今回のはあいつらの方が失礼だがな。ただ、人間達が思っているほど神様も清廉潔白な訳ではない。無論、お前たちが思い描くような優しく愛に満ちたお方もいるが、そう多くはない」
確かに、古事記とかの神話を見ても神様は喧嘩をしたり人間に近いところがあるかも。でも、やはり私のような一般人が想像するのはもっと優しく包容力のある方だろう。先生が、まあ、あいつらは酷すぎるけどな。と付け加えたものの。理想との大きすぎるギャップで残念な気持ちは変わらない。
「いつまでも落ち込んでる暇はないぞ」
先生の言葉は、私の左耳から右耳へと見事に通過していった。
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