第16話 千
私達が通された部屋は、お城にしてはシンプルな空間だった。なんとなく、元の世界の校長室を思いだすような感じで、窮屈ではないが広いわけでもない。
「適当に座れ」
先生はそう言うと、鞄の中の大量のプリントから幾枚かを取りだした。
「どうせ、
先生はとても面倒くさそうにため息を吐く。詳しい説明ってほどではなかったものの、朔もそれなりに説明してくれたような気がするけど。そう思っていると、目の前にプリントが置かれていた。
「朔から、どこまで聞いてるかは分からんが、そのプリントを見てくれ」
「
先生は、なんだ意外と説明してるじゃないかと小さな声で呟いた。
「まあ、そこまで聞いたらあとは数をこなした方が早いだろう。早速、最初の任務を伝える。」
ぴりりと緊張が走るのを感じる。巫女的なことだから神社にでも行くのだろうか。
「人間たちの世界の、西雲神社という神社がある。そこで今人間がどんなことで困っているのかを調査してきてほしい。」
あ、あれ? 思っていたのとだいぶ違うような任務内容だ。てっきりもっと高次な神様から神託を受けてほしいとかそういう感じかと思っていたのに。しかも、これって一度元の世界に戻らなくてはいけないのか。私は先生に聞いてみることにした。
「あの、これって一度元の世界に帰らないといけないんですか」
人見知りの私にしては、勇気を出した方だ。初対面の人物に質問をするなんて。心臓が、バクバクと音を立てているのを感じる。
「いや、お前たちはそう簡単にあちらの世界へ戻ることは出来ない。だから、雲にのって雲の上から人間たちを観察してもらう」
な、なるほど。もう戻ることは出来ないのか。今更になって少しの寂寥感が襲ってくる。どうせ戻っても待っててくれる人なんていないのに。
「私たちは、いつからその任務を行えばいいんですか? 」
「今からだ」
「は? 」
茜の質問に、先生がさも当然のように今からなんて言うから。思わず聞き返してしまった。茜には大爆笑されるし、先生からはギロリと睨まれた。寿命が五分くらい縮んだ気がする。
「さて、何か質問はあるか? 」
先生は、私の混乱などお構い無しに会話を終わらせようとしている。私はなにか質問がないかと頭をひねる。
「先生は、名前なんて言うんですか? 」
茜の質問にそうだ名前聞いてなかったと思いだす。この人の風貌なら、名前も先生なのではと思ってしまう。
「俺の名前は
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