第13話 不思議な雲

 さくの指示で私達は、天界モルンの中心部へ向かうことになった。私達が最初に降り立った場所は建造物がひとつも見当たらなかったけれど、中心部となればビルとかあるのかな。任務に対する不安もあったけれど、まだ見ぬ世界が楽しみでもある。


湊月みつき楽しみだね! 」


 あかねは、不安とか少しもなさそうで羨ましい。というか、どうやって中心部まで行けばいいのだろう。徒歩では到底無理な距離の可能性もある。そもそも方角が、分からない。


「うん、でもどうやって行くか茜分かる? 」


「いや、分かんない」


 ひゅー、と冷たい風が駆けて行ったような気がした。え、まさかの行き詰まり? 私達が絶望の縁に立たされていたその時。


「湊月、なんかそれ動いてない? 」


 茜の言葉の通り、下を見てみると、もこもこっと雲が動いている。地面だったはずの雲が一部、分離している。大きなぬいぐるみくらいの大きさのそれは、ふわふわと私達の目線の高さに浮かんで来た。


「な、何。もしかしてこの世界崩れちゃうの? 」


 恐がる私に対して茜はとても冷静だった。


「いや、この雲しか分離してないからたぶん大丈夫」


 頼りになる仲間だ、と安心していると。子どものような声が聞こえてきた。


「シエロにいきたいもく? 」


 どこからか聞こえてくる声。し、しえろって何。再び私は混乱する。茜も戸惑っているのか辺りをキョロキョロ見回していた。


「ここもく!んー、シエロはまんなかのまちもく!」


 ま、まさか話しているのは目の前の雲? シエロってとこが、天界モルンの中心部ってこと?


「あなたが喋っているの? 」


 茜が、私の疑問に思っていたことを聞いてくれた。私はというと、頭がこんがらがって言葉を発せずにいた。


「やっとわかったもくか。シエロにいくならのってくもく? 」


 のってくもく? のってく? 乗ってく?


「乗せてくれるの? 」


「そうもく! のらないもくか? 」


 なぜかは分からないけれど少し残念そうに聞いてきた。怪しくなくもないけれどこれを逃したら行く方法がない。そう考えたのは茜と同じだったらしく、揃って私たちは頷いた。


「じゃあ、のるもく」


 少し狭いけれどぎりぎり乗ることが出来た。そして驚いたのがそのふわふわ感。この天界モルンの大地である雲は、見かけがふわふわなだけで感触は硬いのに対し、今のっている雲は触ってみてもふわふわだった。


「しっかりつかまるもく!」


 雲はそういうと結構なスピードで、飛んでいく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る