第14話 シエロ

 ふわふわとした見た目とは裏腹にかなりのスピードが出ているようだ。私とあかねは、雲のもこっとしたところをぎゅっと握る。過ぎていく景色は真っ白。時々虹のような綺麗な雲もあったりするけれど。私は、元の世界の雪を思い出した。しかし、雪は冷たく硬い白だ、こちらの雲とは似ているようで全く違う。


「雲さん、シエロまであとどのくらいかかるの? 」


「ぼくは、くもさんってなまえじゃないもく! 」


 え、そこ? 名前で呼んで欲しいなんてなんだか可愛らしい。茜もにこにこと微笑んでいる。でも、私達名乗られてないから名前は分からない。そんなことを考えていると、茜が質問してくれた。


「じゃあ、なんて名前なの? 教えて! 」


「ぼくのなまえは、クルムもく。ふたりはなんていうもく? 」


 クルム、この子にぴったりの可愛い名前。そして、私の質問は華麗にスルーされている。また後で聞いてみよ。


「私は、湊月みつき


「私は、茜。よろしくね! 」


 私は、さっきスルーされたシエロまでどのくらいかかるかをもう一度聞いてみた。乗り心地的には最高、故に長時間乗っていても、快適だとは思うけど。


「みつとあかもくね! よろもく! シエロまではもうすこしもくよ」


 どうやら、クルムは私達の名前を『みつ』と『あか』に略したらしい。なんか本当に可愛い生き物だ。いや、生き物なのか? とりあえず、シエロまでそうかからないことに安心した。


「もうすぐもくっ」


 クルムはそう言うと元から早かったスピードをさらに上げる。これにはさすがの茜も少し怖がる程だ。振り落とされないように、それだけを考えて景色なんて見ている余裕もない。


「ついたもく」


「わぁ、ここは」


 思っていたよりも数倍、いや数十倍は綺麗な景色にうっとりする。元の世界の無機質なビルのようなものは建っていない。カラフルで小さな屋台がいくつか、そして入道雲のような背の高い建物もある。半分くらいの建物は雲でできていて、窓はシャボン玉のようなぷるぷるとしたものがついている。


「こんな色の雲、はじめてみた」


 茜の言う通り、雲は雲でも全てが白いわけではなく淡い色がついている。


「ぼくをわすないでもくっ」


 そういえば、シエロに着くとほぼ同時にクルムの色もカラフルになっていた。ここは、凄いところだ、綺麗すぎてそれくらいの感想しか思い浮かばない。ただ、歩いている神様?の見た目は人の形をしている。容姿は、やはり自分達とあまり変わらないようだ。


「もうすぐ、シエロの中心につくもく」

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