いざ、天界へ

第11話 教育係?

「これが、天界……」


 一面が、マシュマロのように真っ白でふわふわ、泡のようにもっこもこ。それでいて歩いてみると、アスファルトのように安定している。見渡せば、もこもこ地面か、太陽、そして青空ばかりが視界に飛び込む。


「湊月、すごいね、わくわくする! 」


 わくわくっていうのが茜らしいな。私は、少し不安すら覚えているのに。


「そうだね、茜。でも、これから何をすれば……」

「ねぇ、あそこに人がいるよ」


 茜に言われて見てみると確かに少し先に人がいた。二十歳位の青年だろうか? 遠くからだとよく見えないが、見た目は完全に私たちと同じ人間だった。


「おーい! 」


 茜が思いもよらぬ行動に出たものだから、茜が青年に向かって振っていた手を無理やり下ろさせた。


「なんで? 」


「なんで、じゃないよ。怪しい人だったらどうするの? 」


「誰が怪しいって? 」


 そこには、さっきまで数百メートル離れたところにいたはずの青年が立っていた。見た目は、というと正直かっこいい。醤油顔とかいうやつだろうか、まさに王道という感じのイケメンで、その黒い瞳はすっと人を惹きつける。人間ですと言われても全然信じられる。ただ、ほんの数秒でここまで来たということは、人ではなさそうだ。


「あ、君たちか、今年来る二人の少女っていうのは」


 青年は、独り言なのかなんなのか分からないことを呟く。そういえば、言語も同じなのか。正直結構な不安要素だったので安心した。


「まず、俺の自己紹介からだな。俺は、さく。君たちの教育係とか面倒見係とかいうやつだ。わかんないことがあったらなんでも聞いていいぞ。」


石蕗茜つわぶきあかねです! 」

藤原湊月ふじわらみつきです。よろしくお願いします」


 とりあえず指南してくれる人がいるようで、安心した。誰のことも頼れぬまま茜と共に野垂れ死ぬことはなさそうだ。


「まあ、簡単にこの世界の事を説明しておこう」


 私は、ごくりと唾を飲む。茜は、目をキラキラさせて今か今かと耳を澄ませている。


「まず、ここがどこかを言った方がいいな。ここは天界モルン。なぜ、てんかい と読まないのかは俺も知らない。そして、ここは神様の下っ端の神様が働くところだ」


 神様の下っ端の神様?神様にも身分制度のようなものがあるのだろうか。というか、それってもはや神様なんじゃ……。


「君たちが知ってるであろう、天照大御神様や伊邪那岐、伊邪那美様、ゼウス様等々は本当にトップの方。人間たちの会社でいう、社長とかみたいな感じだ。」


 私と茜は揃って顔を見合せた。

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