第9話 夕暮れ
「
「ううん、私は茜のおかげで解決したよ」
「え、私のおかげ?なんだろ」
茜は首をかしげて、うーんと考えていた。なんとなく言うのが恥ずかしくて何が未練だったかは言えなかった。
「茜は、未練とかないの? 」
さっきから疑問だったことを茜に聞いてみる。でも、明るくて皆の人気者の茜に未練とかなさそうだ。
「私は、」
茜は、そこまで言って、一瞬顔を歪めた。そして、茜らしくない下手な笑顔をつくる。
「人に聞くなら自分から言わないと。湊月が言ったら私も言うよ」
うっ、そうきたか。他の人が見ればなーんだ友達欲しかったって言えばいいだけじゃないとか思いそうなことだけれど、私にとっては何年も燻らせてきた想い。そう簡単に打ち明けることは出来なかった。
「湊月も、無理して言うことないよ。私も言わないし。というか、未練ってそういうものじゃない?何年も諦め切れなかったことを他人にペラペラ話せる方が可笑しいよ。」
確かにそういうものか。でも、これから長い付き合いになるんだろうし、いつかお互い言える日がくるといいなーと願う。
「まあ、難しい話はこれで終わりにして、お話しよ? 」
茜は、そういってにっこり笑った。いつもの花が咲くような笑顔に少し安心する
「湊月は、誕生日いつ? 何型? 」
「私は五月二十四日、A型だよ。茜は? 」
「私は、九月十一日。Oだよ。」
「確かに茜ってO型っぽいかも、おおらかなとことか」
その後も、私たちは他愛もない話をして盛りあがった。カラスの声が聞こえて、空がオレンジに染まるのも普段より早く感じる。
「そろそろ帰んなきゃね」
私は名残惜しさを残してそう言った。いい友達ができて本当に良かった。雲の上の天界がどんな場所であっても茜とならきっと楽しめるだろう。
その後の日々は、学校でも茜と一緒に話していた。茜には、声をかけてくる女子がたくさんいたけれど、茜は湊月といたいから。と言って断った、そのときの女子達のナイフのような視線が忘れられない。でも、もうこの『学校』に通うのも、こっちの人達の切れるような嫉妬の視線も、もうすぐお別れだ。そう考えると、少し寂しくも思えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます