第7話 友達
「はっ」
久しぶりに友達と遊ぶってなんか緊張する。なんとなく落ち着かなくて早く起きてしまった。お母さんが魚を焼いている匂いがする。これは、そろそろ呼ばれそうだ。朝ごはんは、普段と何ら変わらないはずなのにドキドキと鼓動が鳴り続ける。友達と遊ぶだけでこれかと思うと情けない。
「
「はーーーい」
「今日は、魚よ、しかも鮭。」
私が椅子に座ってから言えばいいのにわざわざ声をとばしてくる母に笑ってしまった。鮭か、魚の中で一番好きといっても過言ではない。
「いただきます」
「湊月、今日お友達と遊ぶのよね。我が子にもちゃんとお友達がいて安心だわー。湊月ったら学校の話全然してくれないんだから」
「まあ、普通だから、言うことないだけだよ」
本当は、楽しいネタがないだけなんだけどね。なんとなく気まずくなって私はご飯をかきこんだ。ゴホッゴホッと咳き込む私に母は、そんなにお友達と遊ぶのが楽しみなのねーと笑っている。
あーあ私にもそのポジティブ遺伝子を少し分けて欲しかった。自分の部屋に入るとやっと少し落ち着けた。約束の十時まではまだまだ時間がある。
「そうだ、どんな服着てこ」
ファッションセンスに自信のない私。まずは、ズボンかスカート?そんなことにも悩む優柔不断さが不甲斐ない。
結局どれも正解では無いように思えて、一番シンプルなものに決定。こんなことなら、昨日のうちに決めておけばよかったかな。
「少し早いけど行こ」
服を悩んでいた時間は、思いの外長かったようだ。泉公園は、私の家から歩いて五分くらいの公園だ。もしかして石蕗さんも近くに住んでいるのかな。ど、どうしよう、もし他の子もいたら私上手く話せるかな。同じような不安がずっとぐるぐる頭のなかを回っていた。
「少し早く着き過ぎたかな。」
約束の時間の15分前、小さい頃ならブランコとかに乗って遊んでいただろうけど高校生にもなるとそうはいかない。ベンチに座って鞄から文庫本を取り出す。何度も読んでボロボロになっているその本を私はいつも肌身離さず持ち歩いている。
「お待たせ! 」
石蕗さんの明るい声が、背中に届いた。ぐっと振り返ると石蕗さんは申し訳なさそうに
「ごめんね、待たせちゃった? 」
なんて謝るものだから、石蕗さんの彼氏は幸せだろうなー。と勝手に推測する。石蕗さんは隣に座って私に、にっこりと微笑んだ。
「湊月ちゃん、私とお友達になってくれない?」
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