第6話 忘れ物
「つ、
な、なんの電話なんだろう?体の中で太鼓が叩かれているかのような緊張。緩んでいた心が一気に硬直する、
「生徒手帳忘れたでしょ」
あははー、意外にドジなんだねーと電話の向こうで石蕗さんは笑っている。なんだそんなことか、私は安心すると同時に疑問に思う。わざわざ電話する必要あるのかな? と。
「そういえば、昨日のこと考えてくれた? 」
石蕗さんは、ついでのようにさらっと聞いてくれたけどきっとこっちが目的だったと思う。
「うーん。まだ悩んでるかな」
嘘だ。本当は、もう天界へ行こうと気持ちが固まっている。でも、お得意のネガティブ思考で向こうでも友達が出来なかったらと、不安でいたのだ。
「そっか〜。まあ、昨日の今日で決めるって方が無理な話だよね。ねぇ、明日私と遊ばない? 」
そうそう決めれなくて。ん? 私と遊ばない? 聞き間違えかな。話が180度変わった気がするのだけど……
「あ、もしかして明日用事ある? それとも私のこと嫌い? 」
ガーンという効果音が聞こえそうなほどにガッカリとした声音だった。正直、苦手なタイプだったけれど嫌いな訳ではない。それに、友達と遊ぶなんて何年ぶりだろう? 私は、飛び付くように返事をした。
「全然! 全然嫌いじゃない! 嬉しいよ。」
「そっか、よかったー。じゃ10時に泉公園で! また明日! 」
また明日ーと返事をする。嬉しい気持ちと同時にちょっとした不安が押し寄せる。そ、そういえば石蕗さん以外の子が来たらどうしよう。人見知りをこじらせた私は一対一はまだしも大人数は大の苦手だ。
でも、これは自分が1歩進めたってことだよね。朝ごはんが好物だった日は思考も若干ポジになるのか。食べ物の力は偉大だな。よーし明日は頑張るぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます