ルナティアの地理(大陸編)
・バルティカ大陸
ルナティア王国の存在する大陸を古くからバルティカ大陸と呼ぶ。
起源は古代帝国初期に記述された石版にあり、古代文字をそのまま音読みした物である。
大陸は巨大であり、未だその全容を把握する者はいないと言っても過言ではない。
ルナティアは大陸の西方に位置し、大陸全体のおよそ三分の一ほどの面積を占めている。
南方には海峡を隔て、アークティカ大陸が存在することが知られており、この二つの大陸は極めて似た特徴を持つ。
ルナティアの始祖とされる民族は大陸東方より移民して来たと考えられており、伝承によれば神祖たる移民の王は古代帝国の末裔でもあり、この地に舞い戻ってきたとされる。故に古代帝国の正当な後継を名乗り、内外に知らしめたと言う。
・アークティカ大陸
バルティカ大陸の南方、細い海峡を隔て存在する大陸である。
古代帝国末期の文献によれば、かつてバルティカとアークティカは同じ大陸であり、神の振るった刃により分断されたとある。
真偽のほどは定かではないが、少なくとも地質の面では似た特徴を持ち、地下部分の地質においてはバルティカとアークティカの地層はほぼ一致している。
また、バルティカ街道とほぼ同様の土木治水工事により敷設された街道も存在しており、かつて同じ大陸であったと言う説を後押しする根拠である。
大陸としての面積はバルティカと同等かやや小さいと考えられているが、南方は古くから古竜が住む領域であるため、詳しい調査は行われていない。
・バルティカ街道
バルティカ大陸全土には古代帝国時代に敷設されたとされる巨大な街道が網目のように巡っており、交易や物流に用いられる。この街道の主要部分をバルティカ街道と呼ばれる。
都市間を結ぶ巨大交通網ではあるが、古代帝国以後に支流として整備された道も少なくはない。
その点を見分ける最大の要点は水道と龍脈にある。
かつての超大国は治水灌漑事業も積極的に行っていたと断言可能なだけの高度な水道整備が行われており、各地の湧き水から新鮮かつ安全な水が常時大量に確保されて流れている。
この水道は全て地下を通り、街道沿いの民を潤し続けている。
厳密な意味でのバルティカ街道と呼ばれる道にはこうした水道が必ず並行して通されている。
これと同時に巨大な魔力の流れである龍脈の上に街道は敷設されている。
これにより街道の主要部分近辺は常に魔力に満ちており、無限とも言える魔力供給を前提とした物流の仕組みや道具が活用されている。
現在の主要な都市や集落は全てこの街道上、あるいは交差点に存在しており、豊富な水と魔力により、民衆の公衆衛生と安定した生活を支えている。
・ルナティアの治水事業
古代帝国より継承したバルティカ街道とそれに付随する水動脈。
また大小の河川のいずれもが絶えず穏やかな流れを作っていることもあり、建国以来大きな水害は起こっていないことは幸いである。
もっとも、大雨や雪解けによる影響で増水が起こり、洪水は氾濫に至らないかと言えばそうではない。
建国当初、急激な農地拡大の時期はこうした水害は王族を始めとした為政者たちの頭を悩ます事態であったが、やがて古代帝国期の技術や魔術研究に伴い、これら天災に対する対抗策が確立していくこととなる。
現在では堰や人工的な支流、用水路、溜池の建設。堤防の構築にあたって、過去に水害の多発した流域では特に重点的に魔術的な水害対策の術式が刻まれている。
しかしながら、これら術式も万能、永年ではないため、これらの地域の集落では必ず専門の魔術教育を受けた術者を育成し、対応している。
・ルナティアの地質
バルティカ大陸西方に位置するルナティア全域の土地は風の属性の影響が根強い。
連綿と続く王家の血統属性に風が必ず含まれていることも影響していると考えられるが、詳しい部分は定かではない。
これにより、世紀単位では比較的安定した気温と気候に恵まれており、風土病や流行病と言った大きな事象による人工変動は起こっていない。
しかしながら、地域単位や十年単位程度で見た場合にはこの限りではない。
穀倉地帯を直撃した急激な冷夏による作物の不作により、わずか二年で村が地図から姿を消すことなどは幾度も記録として残っている。
この最大の理由も土地に根付いた属性の影響である。
水はけがよく、土そのものに栄養が少ない。
前者は全国を巡る水道や治水灌漑により、多少は補えるが、それとて充分ではない。
後者に関しては様々な対策を農民や為政者たちが行ってきたが、いずれも芳しくはない。
家畜や家禽を休耕地に放つなどして土そのものの改善を試みた所で、二年休ませても一度の作付けで土地が枯れる。
そこで新たな農地を得ようと開墾や開村を行うも、必ず限界が訪れる。
ルナティアの国土は確かにこれにより拡大を続けているが、面積ばかり増えるのみで、恒久的に人を食わせるだけの確かな土地を得られていないのが実情である。
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