ここまでの設定(第四章開始まで)

機動甲冑『サイフィリオン』

機動甲冑『サイフィリオン』Cyphilion

魔術属性:空(風+聖)

頭頂高:推定19フィート(※原器が存在しないため参考値)

総重量:不明

主動力:ニュートロンエンジン

搭乗者:オクタウィア・クラウディア

装甲材:超高温処理鉄鋼材+ウーツ鋼


概要:

式典儀礼型機動甲冑。

機動甲冑はその機能や役割、能力に関し未だ多くの謎を残すが、その中でも一際謎の多い機体がサイフィリオンである。

古代帝国において最強を誇る兵器であった機動甲冑だが、本機はその損傷度合いが著しかった機体である。

これは古代帝国終末期における戦闘がいかに激しかったかを物語る一方で、必ずしも戦闘用として開発されたのではないと言う説が大筋の見解として存在する。

他の機動甲冑と比較し、極めて軽量な素体で構成されており、残された装甲部材も堅牢さよりも美麗さが重視されたように見られるため、こうした説を補強していた。

すなわち、古代帝国においてその栄華を誇るための式典や儀礼などで展示される機体、権力や武力の象徴として存在していると考えられていた。

終末期に於いて、非常事態に陥り、数合わせとして戦場に送り出された、あるいは防衛に使われて使い潰された結果がこの惨状なのだろうとする解釈が一般的であった。

しかしながら、正規パイロットとしてオクタウィア・クラウディアが登録されたことにより、本機の詳細な情報などが判明するとこれら仮説はすべて覆されることとなる。


強行偵察型機動甲冑。

高高度から敵性拠点、勢力圏へ急行。情報収集、強襲、場合によっては近接支援爆撃を可能とする機動甲冑。

それが本来の役割である。

本体重量が軽量な点は快速性、飛行性能を実現するためである。。

また多数の加速用増幅装置などが失われている事が判明。中でも致命的と言えるのが、背面にあった大型の増速器が失われていることであり、こちらは再建造計画が立案中である。

装甲部材も他の機動甲冑とは大きく異る。

他の機動甲冑同様のウーツ鋼で組み上げられてはいるが、本体重量の軽減を目的とした極めて精度の高い発泡処理のされた装甲を機体全身で使用していたことが分かっている。これは本機のみの特殊仕様であり、装甲のみの重量は機動甲冑の基準となるボーパレイダーと比較し六割程度と推定される。

現状では再建時に製造された鉄鋼材で補われているが、ウーツ鋼による装甲の再現が現在進行系で行われており、順次換装が予定されている。

主目的であった飛行能力は失われており、本体重量も増加し特色でもあった機動力は大幅に低下。本体性能に関してもかつての半分にも届かない状態で稼働している。

こうした性能面でのネガティブなポイントを補って余りあるほど機動甲冑と言う兵器は優れており、現状でも大型の巨獣程度であれば充分に対処が可能であることは、お披露目式典での茶番的な模擬戦闘でも証明されている。


武装:

アルス・マグナ謹製機動甲冑用ショートソード(試作型)




・機動甲冑


それはルナティアの存在するはるか千年以上前に建造された巨大兵器群である。

ルナティアでは建国当初よりその存在は確認されており、長年に渡り調査と研究が続けられていた。

兵器であると分かっていながら、一切運用がなされなかったこれらは、そのままであれば王国の財政を無駄食いする無用の長物であったと言える。

これら国家予算の贅肉とも言える鉄塊がガラクタ扱いされず、珠玉の代物として扱われた理由は、たった一点である。



・古代帝国の遺産


ルナティア王国以前――否、古代帝国以前より世界に敷かれていた理である魔術。

しかし、建国当初の王国にはこうしたルールを解する者は決して多くはなかった。

その点において機動甲冑は揺籃の国家にとって、最大の母乳足り得た。

得体の知れぬ鋼の巨人たちは、かつてそこに存在した帝国が残した数々の知識、智慧に迫る明確な足跡を孕んでいた。

ありとあらゆる技術、ありとあらゆる歴史。

物言わぬ鉄の骸の胎内を探る都度に若きルナティアの人々は学び、知り、理解し、身に付け、自らの物としていった。

しかし、同時に幼き者たちは知る。

あまりにも膨大な古代帝国の残した数々は、同時にルナティアにとって過ぎたる炎であった。

複雑怪奇の森を抜けてなお、奇絶怪絶の海が広がる。学術の門徒を叩く者たちにとって、絶望と希望は同時に立ちはだかった。

王国は、帝国の遺産を糧として小さき揺り籠から歩きだそうとしていた。



・再建


少ないながらも分かってきた事がある。

機動甲冑は12機存在していた――

機動甲冑はあらゆる最先端技術が注がれて建造された――

機動甲冑は古代帝国においても最強の兵器であった――

そして分からない事も増えた。

なぜ、これほどの能力を機動甲冑に持たせたのか――

なぜ、古代帝国は滅んだのか――

なぜ、機動甲冑は動かないのか――

失われた部材は現存する機体を参考に再建が進められる。

しかし、どれほど修復が行われても、その巨人たちが目覚める気配は訪れない。

発見、発掘から幾星霜。機動甲冑は沈黙を保ち続けた。

――そう、彼が現れる日までは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る