第32話 新しい力

 激しい試合が終わった。ホームベース前に『武蔵野ジャイアンツ』と『札幌テクノ

バスターズ』の両チームが集合する。一斉に礼をする。満員の観客から精一杯闘った

両チームへの賛辞の拍手が起こった。最高の瞬間だ。

 白木が秀樹に握手を求めてきた。

「いい試合だった。おもしろかったよ。こちらの力が及ばなかった。」

秀樹も迷わずに答える。

「うん。一生忘れられない試合になったと思うよ。ありがとう。」

二人は目を合わせて再度お辞儀をした。他のチームメイトも同じように称えあってい

る。やっぱり最後はこうじゃなくっちゃ。秀樹は思った。


 待望の賞品授与だ。『武蔵野ジャイアンツ』のメンバーの前を『スキルカード』が

回っている。俺は『ダブルフェニックス』を失ったから、なにか強力な『スキルカー

ド』が欲しい・・。回転する『スキルカード』を前に秀樹は心から願った。


 少し離れた位置の三石が悲鳴を上げた。なんだ。秀樹は三石を見る。

「やった。『ウルトラレア』の『かすめ取り』だ。初めての『ウルトラレア』だ。」

 三石は飛び上がって喜んでいる。無理もない。そっか。あの『かすめ取り』も『破

壊(ブロークン)』したんだっけ。所有者だった白木が秀樹に言った。

「強力な『スキルカード』だ。使用できるのは一回限り。使用後に必ず『破壊(ブロ

ークン)』する。だが、相手チームのどんな『スキルカード』も奪うことができる。

君たちの最後の『切り札』になってくれることを祈っているよ。」

 秀樹は頷いた。あぁ、でも三石がうらやましいな。さぁ、俺の『スキルカード』

は・・。

 あ、俺の『スキルカード』も光っている。期待に秀樹の胸の鼓動が高まる。回転が

止まった。

『闘志スキル スーパーレア 死者の生還』

 やった。あの『スーパーレア』だ。再度白木が説明する。

「『死者の生還』も『かすめ取り』と同じで使用すると必ず『破壊(ブロークン)』

する『スキルカード』だからな。使用できるのは1回のみ。タイミングを間違えるな

よ。これも強力だぞ。ただ『ヴィクトリー・ナイン』トーナメントに参加するチーム

にはバレてしまったから対策されるだろう。返し技に注意だな。」

 秀樹は喜びに震えている。やっぱり新しい強力な『スキルカード』の入手の感激は

格別だ。この瞬間がたまらない。思わず顔がにやける秀樹。


 これで厳しい闘いが終わった。チームに安ど感と疲れが一気に襲ってくる。秀樹は

膝から崩れ落ちそうになった。そんな秀樹に三石が寄ってくる。

「やったぜ、秀樹。『ウルトラレア』の『かすめ取り』が手に入ったよ。俺、感動し

ている。初めての『ウルトラレア』だ。」

 三石は体中から喜びが溢れている。秀樹も祝福する。

「あぁ、見ていたよ。おめでとう。これで『武蔵野ジャイアンツ』の戦力も大幅アッ

プだな。」

「使用すると『破壊(ブロークン)』ってのが泣けるけど、贅沢は言えないな。色々

と作戦も立てなきゃいけない。秀樹も『死者の生還』が入手できたんだよな。これで

ゲームでの戦略の幅が大きく広がるな。」

 二人で目を見つめあって笑った。


 ふと、三石は何かを思い出したようだ。秀樹に提案する。

「この後、『ヴィクトリー・ナイン』トーナメントの他の試合が行われる。チームの

メンバーで観戦モードで見てみないか。」

「そうだな。これで俺たちもベスト8入りだ。他のチームの情報も知っておく必要が

ある。そうしよう。手の内を知っておかないとな。」

 二人はチームのメンバーにも声を掛け、この後の試合を観戦することとなった。

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