第6話 作戦会議
小学校での休憩時間。秀樹は教室で同級生の球児と三石の二人と『ヴィクトリー・
ナイン』トーナメントの打ち合わせをする。机の上には『ヴァーチャル・ナイン』を
特集した雑誌が広げられている。
「いよいよ開始、『ヴィクトリー・ナイン』トーナメント!!。今年のチャンピオン
はどのチームだ。」
カッコいい見出しが表紙に書かれている。前回の上位チームのインタビューの記事
もある。『ブラックアイズ』の欄もあった。今回も優勝候補の一つだ。あの黒田も雑
誌には礼儀正しく話している。ちょっと腹立たしい。初出場の俺たち『武蔵野ジャイ
アンツ』は名前だけが寂しく掲載されている。まぁ、これは仕方ないか。
秀樹は二人に語り掛けた。
「いよいよ明日だな。球児、三石、カードは揃った?。」
球児が答える。
「う~ん、『スキルカード』が一試合は持たないかも。こんなトーナメントに参加す
るベテランのチームは沢山の『スキルカード』を持っているんだろうし。不安だよ。
あ、でも『神速』は10枚くらい集まったよ。僕はこのカードが大好きなんだ。すご
く便利だよ。」
三石も同じような状況のようだ。
「俺も不安。ある程度の『スキルカード』はあるけど、『スーパーレア』とか『ウル
トラレア』なんて1枚も無いしな。」
初めてから一か月も経ってないからなぁ。それに小学生の財力ではアーケードゲー
ムのプレイ回数には所詮限界がある。さすがにトーナメント申し込みの時の勢いは無
くなってしまっている。
その時、教室のドアが勢いよく開いた。女の子が二人、教室に飛び込んできた。
「お兄ちゃんたち。作戦はどう?。」
五年生の妹の秀美と友達の真子の二人だ。そのままの勢いで机まで走って寄ってき
た。全く遠慮せずに上級生の秀樹たちの話に入ってくる。困った奴らだ。
「何しろ俺たちのまともな試合はこれが初めてだからな。二人はどうだ?。」
「『スキルカード』を集めるだけで精いっぱい。真子も似たようなもんだよね。」
「うん。それにカードの数以外にも正式な試合には色々と問題がありそうよ。普段の
ゲームだと優しいプレイヤーの人が多いけど、この『ヴィクトリー・ナイン』トーナ
メントには酷いプレイをする人も多いってネットに書いてあったよ。なにしろ賞金が
百万円だもんね。真面目に進学のための資金に狙っているチームもあるんだって。」
やっぱり公式試合の初参加が全国トーナメント戦なのは無理があったかな。他のク
ラスの四人も同じようなものだろうな。居合わせた5人は不安に包まれる。重苦しい
空気の中、秀美が発言した。
「もぉ、みんな暗い顔して。勝負なんてどうなるか分かんないよ。初心者だから力が
無いのは当たり前。むしろ強い相手に大逆転なんてしたら楽しいって思わない?。私
はこの機会をみんなと思いっきり楽しみたいなぁ。普段の野球じゃできないスーパー
プレイにワクワクしちゃう。」
うん。そうだよな。キャプテンの三石がこの場にいる全員に言った。
「準備不足はしょうがないさ。実際に超初心者チームだからな。まぁ、『案ずるより
産むが易し』ってことわざもあるし。俺たちはチャレンジするだけさ。」
全員がお互いの顔を見つめあって笑った。
寝る前にベットで秀樹は考えた。できることは全部やった。だけど、店長が言って
いた『ラフプレイ』の意味がよくわからない。雑誌の記事でもわかりにくい表現だっ
たし。少なくとも実際にお店で対戦した相手にはそんなプレイスタイルの人はいない
んだけどなぁ。通常の野球の試合の展開で考えるのがいけないんだろうなぁ。秀樹は
期待と心配でなかなか寝付くことができなかった。
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