第29話 貴重な一点

実況:さぁ、バッターボックスには五番中堅手(ライト)の中尾選手が入ります。ま

  :さに死闘と呼ぶにふさわしい展開になった。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン 渾身のストレート」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン ライン際のコントロール」


実況:バットに当たったが、当たり損ねだ。三塁手(サード)前にコロコロとボール

  :が転がっている。サードは間に合わない。一塁手(ファースト)にボールを投

  :げる。一塁はアウト。

  :ツーアウト・三塁だ。『武蔵野ジャイアンツ』、首の皮一枚残った。次のバッ

  :ターは六番・遊撃手(ショート)のサスケ選手だ。


 秀樹はサスケに視線を向けた。ウインクをする。アイコンタクトでメッセージを

送ったのだ。サスケは頷く。『札幌テクノバスターズ』には知られずに済んだよう

だ。


実況:さぁ、サスケ選手がバッターボックスに入った。白木選手がゆっくりモーショ

  :ンに入った。ツーアウト・二塁。『武蔵野ジャイアンツ』は既に代用(トーク

  :ン)が二人だ。守備には大きな穴ができた。ここを凌げば『札幌テクノバスタ

  :ーズ』の勝利が大きく近づくぞ。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン カミソリシュート」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン セーフティバント」


 ここだ。秀樹は三塁を飛び出してホームに向かう。


■ランナー  「マルチスキル レア 神速」


実況:あぁ、サードランナーの秀樹選手、『ホームスチール』だ。秀樹選手、物凄い

  :勢いでホームベースに突っ込んでくる。バッターのサスケ選手は『セーフティ

  :バント』だ。ボールは内側に鋭く曲がった。『カミソリシュート』だ。ここで

  :『セーフティバント』を決めることが出来るのか。


 もうこれしかない。秀樹は懸命に走る。サスケは『カミソリシュート』を必死の形

相で睨んでいる。当ててくれ、サスケ。頼む。

「コン」と音がする。一塁手(ファースト)の前にボールが転がる。やった。サスケ

、よくやったぞ。最高のバントだ。


■ランナー  「走塁スキル レア 黒い弾丸」


実況:サスケ選手のバントが決まった。サードランナーの秀樹選手が『黒い弾丸』で

  :ホームに突っ込んでいる。ボールを取った一塁手は捕手(キャッチャー)の冬

  :樹選手にそのままボールをトス。秀樹選手と冬樹選手の激突。両者、吹き飛ん

  :だぁ。


 くぅ、痛みに耐えて秀樹は起き上がる。まだ、冬樹は動けない。地面に伏したま

ま、秀樹はホームベースにタッチした。


□マザー  「判定:ホーム セーフ」


 やった。まさしく、最後の力で一点を取った。サスケは倒れた冬樹を見て二塁を狙

う。冬樹は二塁手(セカンド)にボールを投げるが間に合わない。


実況:ホームベース上での再度の死闘だ。満身創痍の秀樹選手が貴重な、本当に貴重

  :な一点を奪い取りました。

  :これで『武蔵野ジャイアンツ』がついに逆転。スコアは3対4だ。なおもツー

  :アウト・二塁。チャンスが続く。あぁ、だがサスケ選手の頭上にも代用(トー

  :クン)化のカウントダウンが現れた。これで『武蔵野ジャイアンツ』の三人が

  :代用(トークン)だ。最終回を守り切れるのか。次のバッターは七番・一塁手

  :(ファースト)のヒトミ選手だ。この後の展開を考えればもう一点欲しいとこ

  :ろだが。


 白木は不機嫌そうにヒトミを睨みつけている。まさか逆転されるとは思っていな

かったのだろう。


■ピッチャー 「投球スキル レア フォークボール」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:ピッチャー、投げた。ホームベース前でボールが落ちる。『フォークボール』

  :だ。ヒトミ選手、バットを止めた。微妙なコースだ。『ストライク』・『ボー

  :ル』のどちらの判定でもおかしくない。


□マザー   「判定:ボール フォアボールでランナーは一塁へ」


実況:ヒトミ選手、素晴らしい判断だ。『武蔵野ジャイアンツ』、更にランナーを追

  :加。ツーアウト・一塁・二塁。バッターは八番捕手(キャッチャー)の大輔選

  :手だ。このチャンスを広げることができるか。おおっと、『札幌テクノバスタ

  :ーズ』の捕手(キャッチャー)の冬樹選手が立ち上がった。『敬遠』だ。バッ

  :トが届かないところまで冬樹選手は移動。念には念をいれている。


■ピッチャー 「宣言無し」 

■バッター  「宣言無し」


実況:これでツーアウト・満塁。だが、次のバッターは秀美選手の代用(トークン)

  :だ。『武蔵野ジャイアンツ』、チャンスもここまでか。


 秀樹も頭を抱える。さすがにこれでは打つ手がない。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン 渾身のストレート」 

■バッター  「宣言無し」


実況:代用(トークン)、空振り三振。スリーアウト・チェンジだ。三者、残塁。だ

  :が、『武蔵野ジャイアンツ』、この回に、貴重な、貴重な一点を奪い取った。

  :さぁ、最終回、九回の表、『札幌テクノバスターズ』の攻撃。打順は五番捕手

  :(キャッチャー)の冬樹選手から。対する『武蔵野ジャイアンツ』、すでに三

  :人が代用(トークン)化している。果たしてこの状況で一点差を守り切ること

  :ができるのか。

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