第27話 力尽きていく仲間

 秀樹はスコアボードを振り返った。後は八・九回の二回の攻防を残すのみ。俺たち

に延長戦を闘う力は残っていない。この八回は『札幌テクノバスターズ』は一番から

の好打順だ。ここをいかに押さえるかが勝負の分かれ目だ。思わず肩に力が入る。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン 渾身のストレート」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン セーフティバント」


実況:八回表、『札幌テクノバスターズ』、先頭バッターが『セーフティバント』

  :だ。三塁手(サード)の三石選手の前にボールが転がる。


■ランナー  「マルチスキル レア 神速」


実況:ランナー走る。三石選手、ボールを取って一塁手(ファースト)のヒトミ選手

  :にボールを投げる。ボールが少しそれた。長身のヒトミ選手、懸命に体を伸ば

  :してボールを捕った。


□マザー   「判定:ファースト セーフ」


実況:『札幌テクノバスターズ』、待望のノーアウトのランナーが出た。ノーアウト

  :・一塁だ。打順は二番。さぁ、ランナーを進めることができるか。内野は前進

  :守備。送るのか、強攻か。


 バッターの動きが微妙に気ごちない。おそらくバントでランナーを二塁に送ってく

るつもりだ。バントを外す変化球で勝負だ。


■ピッチャー 「投球スキル レア フォークボール」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン バントエンドラン」


実況:ランナー走った。『バントエナンドラン』だ。ボールはホームベースの手前で

  :落ちる。『フォークボール』だ。バッター、前に転がすことができるか。内野

  :は更に前進。


 一塁手(ファースト)のヒトミも投球と同時にダッシュ。秀樹はファーストカバー

に走る。だが、バッターの技術が上回った。「コン」という音とともにボールがライ

ン沿いに転がる。セカンドはもう間に合わない。ヒトミは一塁カバーの秀樹にボール

を投げる。アウトだ。


実況:『札幌テクノバスターズ』。送りバント、成功だ。ワンアウト・二塁。打順は

  :クリーンアップに繋がった。終盤に訪れた絶好のチャンスだ。バッターは三番

  :だ。


 秀樹は額の汗を拭う。落ち着け。自分に言い聞かせる。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン 渾身のストレート」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


「カーン」と快音が響く。が、サード側へのファールフライだ。秀樹はホッと一息を

つく。しかし三石はファールのボールを追って走る。ファールのボールに飛びつく。

ダイレクトャッチだ。だが、ダッシュしたスピードは落ちない。さっきの秀美と同じ

ように壁に激突する。秀樹は叫んだ。

「三石・・。」

 三石は捕球したグラブを上げた。ツーアウトだ。みんな必死に守っている。だが、

運命のカウントダウンが三石の頭上に現れた。三石のスタミナがゼロになったんだ。

代用(トークン)のカウントダウンが始まる。


実況:あぁ、ついに三塁手(サード)の三石選手にカウントダウンが発生した。

  :10・9・8・・・・・。『武蔵野ジャイアンツ』にはもう防ぐ方法は無い。

  :三塁手(サード)が代用(トークン)に変わった。三石選手が消え、マネキン

  :選手に変わった。ツーアウト・二塁。バッターは四番投手(ピッチャー)の白

  :木選手だ。


 白木はバッターボックスの前で呟いた。

「ふん。手こずらせやがって。これで終わりだ。止めを刺してやる。」


実況:さぁ、二塁のランナーは走る気が満々だ。投球と同時にスタートするでしょ

  :う。白木選手はサード方面を狙うのか。それとも強打か。目が離せません。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン 渾身のストレート」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン ライン際のコントロール」


 あぁ、やられた。秀樹は打球を目で追う。三塁手(サード)の代用(トークン)は

ほとんど動かない。レフト線に打球は転がって行く。


■レフト   「マルチスキル レア 神速」


実況:白木選手、『ライン際のコントロール』だ。打球はレフト線に落ちた。これは

  :長打コースになりそうだが。おおっと、左翼手(レフト)の秀美選手、『神

  :速』を使ってボールに追いついた。だが、セカンドランナーは三塁を蹴った。

  :間に合うか・・。


■レフト   「守備スキル レア レーザービーム」


 秀美からの必死のバックホームだ。小さな捕手(キャッチャー)の大輔にダイレク

トでボールが届く。


■ランナー  「走塁スキル レア 黒い弾丸」 

■キャッチャー「守備スキル アンコモン 根性」 


実況:先ほどの再現だ。ランナーは『黒い弾丸』でホームに突っ込む。大輔選手、ア

  :ンコモンの『根性』で立ち向かう。クロスプレイだぁ・・。判定はどうだ。


□マザー  「判定:ホーム アウト」


 大輔、よくやった。凌いだぞ。秀樹は額の汗を拭う。秀美に礼を言おうとレフトを

見る。だが、秀美の頭上にも代用(トークン)のカウントダウンが現れた。あぁ、秀

美のスタミナもゼロになった。二人目の代用(トークン)だ。


実況:スリーアウト・チェンジ。だが、左翼手(レフト)の秀美選手も代用(トーク

  :ン)に変わった。『武蔵野ジャイアンツ』のプレイヤーは残り7人。

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