第25話 同点

 白木も明らかに焦っている。まだ『武蔵野ジャイアンツ』が追いすがってくるのが

不愉快なのだろう。冷静さを失っている。投げ急いでいる。

「こいつら、手こずらせやがって。もう、お前たちのスタミナ量では勝ち目は無いん

だぞ。とっとと諦めろよ。」


■ピッチャー 「投球スキル コモン カーブ」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン セーフティバント」


 サスケはその隙を見逃さない。三塁側に絶妙なセーフティバントをした。三塁手

(サード)がボールに突っ込んでくる。サスケは走る、走る、走る。


■バッター 「走塁スキル アンコモン ヘッドスライディング」


実況:三塁手(サード)がボールを取って一塁手(ファースト)にボールを投げる。

  :サスケ選手、ここで『ヘッドスライディング』だ。これもクロスプレイだ。マ

  :ザーの判定はどうだぁ。『武蔵野ジャイアンツ』のナイン、必死に『札幌テク

  :ノバスターズ』に食らいつく。


□マザー  「判定:ファースト セーフ」


実況:セーフ、セーフだ。俊足のサスケ選手。『セーフティバント』を決めました。

  :これでツーアウトながらランナーが一・三塁だ。続くバッターは七番・一塁手

  :(ファースト)のヒトミ選手だ。 


 さすがに冷静なヒトミもプレッシャーを感じているようだ。やっと作ったチャンス

だ。無理も無い。秀樹はヒトミに声を掛けた。

「ヒトミ、リラックスだ。肩の力を抜け。結果なんて余計な心配するなよ。」

ヒトミは無言で頷いた。


■ピッチャー  「投球スキル アンコモン 渾身のストレート」 

■バッター   「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:ヒトミ選手、ストレートを読んでいたか。タイミングはドンピシャだ。打球は

  :ライトとセンターの間に落ちた。ヒトミ選手、タイムリーヒットだ。三塁ラン

  :ナーの三石選手、今ホームベースを踏んだ。これで3対2だ。一塁ランナーの

  :サスケ選手も二塁を蹴って三塁へ向かって走る。そのまま三塁へ進塁。六回の

  :裏、『武蔵野ジャイアンツ』は二点を奪取。一気に1点差まで追い上げたぞ。

  :なおもツーアウト・一塁・三塁。次のバッターは八番・捕手(キャッチャー)

  :の大輔選手。


 三石がホームイン。なんとかここで1点差まで『札幌テクノバスターズ』に追いつ

いたぞ。

 白木は戸惑っていた。連打を浴びたのももちろんだが、こいつらスタミナを全然考

慮していない。お前ら、これじゃぁ何人かは確実に九回まで持たないんだぞ。玉砕覚

悟か。全国へのネット中継の試合で惨めなコールドゲームをさらすつもりか。理解が

できない。

 大輔がゆっくりと打席に向かう。体が震えている。元々気が弱くて、守備もみんな

が嫌がった捕手(キャッチャー)になってしまった。自然に打順も目立たない八番に

なった。でも俺はわかっているよ。誰よりも練習して誰よりも頑張っていたことを。

秀樹は大輔に大きな声を掛けた。

「大輔、思いっきり三振してこーい。俺が許す。」

大輔は少し笑った。


実況:大輔選手、バッターボックスに入りました。このゲームを左右する大変重要な

  :打席です。ヒットが出れば同点のチャンスだ。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン 渾身のストレート」 

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:大輔選手、打ったぁ。だが当たり損ねだ。打球はフラフラと三塁手(サード)

  :の頭上を越える。これは絶妙な位置に飛んだ。ポテンヒットになるか。三塁手

  :(サード)がジャンプするが、届かない。ポテンヒットだ。


 サスケがホームに突っ込む。タイミング的にはアウトだ。だが、サスケは迷わな

い。スピードを上げる。『スキルカード』がサスケの側で回転する。


■ランナー 「走塁スキル レア 黒い弾丸」


実況:『武蔵野ジャイアンツ』、再度サスケ選手がホームに突っ込んだ。『ブラック

  :カード』の『黒い弾丸』だ。

  :捕手(キャッチャー)の冬樹選手、体を低くして衝突に備えている。ボールが

  :三塁手(サード)からホームに届く。またまた激しい激突だぁ。冬樹選手、吹

  :き飛ばされたぁ。


□マザー   「判定:ホーム セーフ」


 サスケがガッツポーズをする。チームのメンバーがサスケに抱き着く。ついに、つ

いに同点だ。ベンチ前はお祭り騒ぎだ。この隙に打ったヒトミは三塁を狙って走る。

だが冬樹は見逃さない。三塁手(サード)に矢のような送球。これはマズイ。秀樹は

思わず目を覆う。


実況:おっと、打ったヒトミ選手がこの隙に三塁を狙ったが、捕手(キャッチャー)

  :の冬樹選手の三塁手(サード)への返球でタッチアウト。スリーアウトチェン

  :ジです。だが、『武蔵野ジャイアンツ』、この回に一挙3点。3対3の同点に

  :追いついたぞ。試合は一旦振り出しに戻った。

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