第19話 マグマ・スタジアム
さぁ、『ヴィクトリー・ナイン』トーナメントの二回戦。『武蔵野ジャイアンツ』
✕『札幌テクノバスターズ』だ。秀樹は身震いする。
9人のメンバーがコンソール(操作機器)に座る。前回と同じように再び全員が緊
張に包まれている。三石がチームのメンバーに声を掛ける。
「いよいよ二回戦だ。今回も頑張ろうぜ。」
さぁ、スタートの掛け声だ。
「ヴァーチャル・イン!」
画面が仮想球場(ヴァーチャル・スタジアム)に切り替わる。
仮想空間で両チームが並ぶ。『札幌テクノバスターズ』のキャプテンの白木が丁寧
に挨拶をする。彼は投手(ピッチャー)の四番打者。副キャプテンの冬樹は捕手(キ
ャッチャー)で五番バッターのようだ。
「では『武蔵野ジャイアンツ』の皆さん、よろしくお願いいたします。」
三石も挨拶で返す。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
前回の『ブラックアイズ』戦とは偉い違いだ。秀樹は安心する。
やがて両チームの間に『ジャッジカード』が出現して回転を始めた。先行・後攻の
抽選だ。カードを見守る両チーム。やがてカードは静かに止まった。先行は『札幌テ
クノバスターズ』。俺たち『武蔵野ジャイアンツ』は今回も後攻だ。
実況:さぁ、『ヴィクトリー・ナイン』トーナメントもいよいよ二回戦だ。どちらも
:今回のトーナメントが初出場のフレッシュチーム。前回は『ブラックアイズ』
:との死闘を制した『武蔵野ジャイアンツ』と、際どい接戦に勝利した『札幌テ
:クノバスターズ』。どちらがベスト8に進出するのか。
白木の前で『スキルカード』が回転する。先行の『フィールドスキル』を使うよう
だ。きたな。秀樹は白木を睨みつける。
いきなり白木の足元から地割れが発生してグラウンド全体が1メートルほど陥没す
る。落とし穴に落ちたような感覚。全員が垂直に落下した。続けて地震が起きたよう
な激しい揺れが発生した。足もとが揺れて立っているのが難しい。白木が右手を上げ
て『スキルカード』を宣言する。
■先行チーム 「フィールドスキル ウルトラレア マグマ・スタジアム」
宣言と同時にグラウンド全体から天空に向けてマグマが噴出した。秀美たちは驚い
て悲鳴を上げる。まるで火山の噴火の瞬間のようだ。幸い熱は感じないけど・・・。
現実なら即死間違いなしの状況だ。ヴァーチャル空間ならではの風景だ。
「すごい。こんなことさえできるのか。」
秀樹は周りのグラフィックの変化に驚きながらも楽しんでいる。
実況:え。『札幌テクノバスターズ』がいきなり『ウルトラレア』だ。『フィールド
:スキル』の『マグマ・スタジアム』で球場はいきなり火山の噴火口のようにな
:った。地面はマグマのように真っ赤。急に猛烈に暑くなりました。『武蔵野ジ
:ャイアンツ』、再びスタミナ戦に持ち込まれたぞ。
球場の温度が急に上昇を始めた。暑い。暑いぞ。これも『スキルカード』の影響な
のか。秀樹はスコアボードに表示される『スキルカード』の効果を確認する。
『マグマ・スタジアム』
・試合の開始時のみ使用可
・守備中のスタミナダウンが8%増加。また全プレイのスタミナ消費量が二倍
・試合終了まで『スキルカード』以外でのスタミナの回復は無い
うわぁ。またスタミナ戦か。秀樹はため息をついた。だけど俺にはスタミナ回復の
『スキルカード』が2枚もある。『フェニックス』と『ダブルフェニックス』だ。大
丈夫。だけど使いどころに注意だな。あれ、『札幌テクノバスターズ』のベンチがざ
わついている。
「白木キャプテン。なんて『スキルカード』を出しているんですか。うちはスタミナ
回復の『スキルカード』なんて誰も持ってませんよ。どうするんですか。最終回まで
持ちませんよ。」
「しまった。つい勢いで間違って出しちゃった。まぁ、どうにかなるさ。みんな、ス
タミナに注意だ。基本的に『スキルカード』は使うなよ。」
秀樹は笑った。なんだ、あの白木って人。結構おっちょこちょいなんだな。
観客席に神谷とリサが並んで座っている。
「うわぁ。見え見えの罠(トラップ)だね。リサのお気に入りは大丈夫かい?。」
「う~ん、初心者の小学生チームだからね。騙しあいは苦手でしょ。それにしても暑
いわねぇ。」
そう言うと、リサはシャツのボタンを一つ外した。豊満な胸元が広がる。
「おいおい、俺まで色仕掛けかい。」
「え、神谷君には通じないでしょ。これぐらいしたって全然平気でしょ。」
リサは右足を前方に大胆に伸ばした。スラリとした足が露わになる。神谷は少し動
揺する。前方の席の男性が気配に気が付いて振り向いた。男性はリサの美脚を眺めて
いる。
「寄るな、女狐。まったくお前はもう。」
「なによ、失礼ね。別に減る訳でもないし。見るだけなら許してあげるわよ。でも、
タッチはダ・メ・よ。」
神谷もため息をついた。
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