第13話 反撃

実況:あぁ、ここで左翼手(レフト)の左京選手のスタミナがゼロになった。

  :『ウルトラレア』・『スーパーレア』と『スキルカード』を使い過ぎたか。

  :左京選手の頭上にカウントダウンの数字が現れた。代用(トークン)に

  :なれば、3点差があっても守るのはかなり苦しい。これはどうなるのか・・。


 やったぞ。ここで左京が代用(トークン)になれば勝利に近づく。『ブラックアイ

ズ』の他のメンバーのスタミナもかなり少なくなっている。『フェニックス』のおか

げで『武蔵野ジャイアンツ』のメンバーのスタミナには余裕がある。あはは。逆にス

タミナ勝負で勝てるかも知らない。秀樹は甘い淡い期待を持った。


その時、『ブラックアイズ』の三塁手(サード)が苦虫をかみつぶしたような顔で

右手を上げた。『スキルカード』が回転している。嫌な予感がする。


■サード  「闘志スキル ウルトラレア ダブルフェニックス」


実況:あぁ、ここで『ブラックアイズ』の三塁手(サード)がまさかの宣言。『ウル

  :トラレア』の『ダブルフェニックス』を宣言だ。私も初めて見ました。今度は

  :二つの炎の竜巻が渦巻く。球場を再度、今度は二羽のフェニックスが現れた。


 秀樹は目を疑う。球場を二羽のフェニックスが舞っている。なんだ、これは。追い

詰められてゼロになっていた左京のスタミナもマックスまで回復している。『ダブル

フェニックス』だって。スコアボードの解説を見る。


『ダブルフェニックス』

 ・一試合に一回のみ使用可(闘志スキルを50%消化)

 ・チームの全プレイヤーのスタミナを最大にする。


〇マザー   「ダブルフェニックス ブロークン」


『ブラックアイズ』の三塁手(サード)が大きな悲鳴を上げる。ウルトラレアの『破

壊(ブロークン』だ。これは辛い。敵ながら同情する。

「うあぁぁぁ。俺のウルトラレアが・・。」

 膝を付き、うなだれる三塁手(サード)。左京が駆け寄り隣で肩を叩く。

「すまん。だが助かったよ。小学生チームに負けるところだった。感謝する。」


 秀樹は肩を落とす。はぁ、せっかくのチャンスだったのになぁ。これでスタミナ勝

負は俺たちがまた劣勢になった。だけど4対1。点差は3点に縮まった。『ブラック

アイズ』の背中が見えてきたぞ。


実況:さぁ、試合は残るところ、八・九回を残すのみ。天気は雲一つない青空。地面

  :も乾いて通常のグラウンドに戻った。『ブラックアイズ』、下位打線の七番か

  :らのスタートだ。


■ピッチャー 「投球スキル コモン カーブ」

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:バッター打った。センター前ヒット。これでノーアウト・一塁だ。チャンス

  :到来。『ブラックアイズ』、再度ここで引き離すか!。


■ピッチャー 「投球スキル コモン シュート」

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:ボールはライト前に微妙にフライになった。右翼手(ライト)の秀樹選手、必

  :死にボールに突っ込む。落下前に取れるか微妙なタイミングだ。取れなければ

  :長打が確定だ。秀樹選手、捕れるかぁ。


■ライト   「マルチスキル レア 神速」


 秀樹は『スキルカード』を宣言して、ボールに突っ込んだ。捕れなければ長打が確

定だ。一か八かの選択。まさしくギリギリのタイミングだ。


〇マザー   「判定:捕球 バッターアウト」


 間に合った。ダイレクトキャッチ。秀樹はそのまま一塁手(ファースト)にボール

を投げる。二塁に進んだランナーは戻れない。


〇マザー   「判定:ランナー アウト」


実況:秀樹選手、ファインプレイだ。『武蔵野ジャイアンツ』も必死に守る。これで

  :ツーアウト・ランナーなし。『ブラックアイズ』のチャンスを潰したぞ。次の

  :バッターは九番だ。


■ピッチャー 「投球スキル コモン ストレート」

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:バッター空振り。スリーアウト、チェンジだ。『武蔵野ジャイアンツ』、3点

  :差を追いかける。もう追いつけない距離じゃない。番狂わせが起こるか。バッ

  :ターは八番バッターからの下位打線だ。


 残すはこの八回と九回のみ。3点差ならまだいける。この回で追加点が欲しい。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン カミソリシュート」

■バッター  「打撃スキル レア ライン際のコントロール」


実況:バッター、打ったぁ。レフト線上にボールが落ちる。長打コースだ。バッター

  :は一塁を蹴って一気に二塁を目指すが・・。


■レフト   「守備スキル レア レーザービーム」


実況:左翼手(レフト)の左京選手。再び『レーザービール』だ。凄い勢いでボール

  :が二塁手(セカンド)に戻ってきた。


 うわ、まずい。ベンチの秀樹は思わず目をつぶる。バッターは慌てて一塁に戻る。

セーフ。危ないところだった。ノーアウト・一塁だ。


実況:ノーアウト・一塁。バッターは九番・左翼手(レフト)の秀美選手だ。


 秀樹は願った。秀美、なんとか俺まで回してくれ。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン 渾身のストレート」

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打・・・」


実況:おっと。秀美選手は振りかけたバットを止める。コースは微妙だ。ストライク

  :か、ボールか。判定はどうだ。


〇マザー   「判定:ボール フォアボール バッター一塁へ」


 やった。秀美、よく見たぞ。一球一球のプレイに秀樹の心臓は止まりそうだ。これ

でノーアウト・一塁・二塁。


実況:秀美選手、よく選んだ。『武蔵野ジャイアンツ』、さらにランナーを追加だ。

  :打順は一番に戻り、投手(ピッチャー)の真子選手だ。


■ピッチャー 「投球スキル レア フォークボール」

■バッター  「打撃スキル アンコモン ヒットエンドラン」


実況:一塁ランナーと二塁ランナー、ピッチーが投げると同時にスタート。ヒットエ

  :ンドランだ。ボールはフォームベースの手前で激しく落ちる。『フォークボー

  :ル』だ。難しい球だ。真子選手、打つことができるか。ボールを激しく睨みつ

  :けている。運命のバットを振った・・・。当たった。が当たり損ねだ。一塁手

  :(ファースト)前にボールが転がる。あぁ、一塁手(ファースト)がサードに

  :投げた。これは、好判断か。際どいぞ。間に合うか。


■ランナー  「走塁スキル アンコモン ヘッドスライディング」


実況:ランナーと三塁手(サード)が激しく激突。砂埃が舞ってよく見えない。結果

  :はどうなったぁ。マザーの判定はどうだぁ・・。


〇マザー  「判定 サード セーフ」


実況:おお、セーフだ。『ブラックアイズ』のフィールダースチョイスだ。『武蔵野

  :ジャイアンツ』、ノーアウト・満塁だ。追加点、いや、同点や逆転さえもあり

  :えるぞ。絶好のチャンスだ。次のバッターは二番・二塁手(セカンド)の球児

  :選手だ。


 球児は緊張で震えている。ネクストバッターボックスの秀樹に話しかけてきた。

「秀樹、どうしよう。ここで凡打ならダブルプレイでお終いだ。ここまで必死に闘っ

たのが全部無駄になってしまう。でも、僕は、僕は自信がないよ。もうここは三振し

てしまおうか。秀樹にこのチャンスを託したい。」

 秀樹は思った。球児は真面目だからなぁ。このプレッシャーは相当に厳しいだろう

な。ただ、ただ、俺は励ますだけだ。

「失敗なんて考えるなよ。元々お前が『白い流星弾』から俺や真子を救ってくれたか

らこそ、このチャンスが訪れたんだ。思いっきり全力で振って来いよ。後悔しないよ

うにな。」

「うん。わかった。僕はただ全力でバットを振ってくるよ。ありがとう。」

 秀樹と球児は拳を合わせた。

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